人気ブログランキング | 話題のタグを見る

あれっ、コーポレート・ファイナンスの4つの原則って?

http://www.mag2.com/m/0001677393.html

「企業価値経営 コーポレート・ファイナンスの4つの原則」
(マッキンゼー・アンド・カンパニー、ダイヤモンド社)より  2012年8月30日 第1刷発行



 まずは、本書を通じて、世界を代表するマッキンゼーの人たちが考えるファイナンスの4つの原則を理解した上で、何が大切なのかを考えてみたい。



『 第Ⅰ部 4つの原則


  ファイナンスにおける4つの原則


第1の原則

 企業が価値を創造するのは、投資家から調達した資本について、資本コスト(投資家が合理的に期待する利回り)を上回るリターンが出るようキャッシュフローを生む必要がある
=「価値根源(core of value)の原則

 企業は、手持ちの現金を投資し、将来にそれ以上の現金を稼ぎ出すことで、株主価値を創造する。創造される価値の大きさは、企業活動が生み出すキャッシュフローから投資額を差し引いた額に等しい(ただし、将来のキャッシュフローは時間の経過とリスクの分だけ今日のキャッシュフローより価値が低くなるため、調整が必要となる)。

 企業の投下資産利益率(ROIC)と売上成長によって、売上高がどの程度キャッシュフローに転換するかが決定する。

 したがって、価値創造の大きさは、究極的にはROICと売上成長、そしてもちろん、この2つを長期間にわたって維持できる能力によって決まる。

 ROIC    
           ⇒ キャッシュフロー
 売上高成長率               ⇒ 企業価値
              資本コスト


第2の原則

 株主にとって価値が創造されるのは、企業がより多くのキャッシュフローを生み出す場合であり、キャッシュフローの分配方法とは無関係である
=「価値不変(conservation of value)の原則

 企業がキャッシュフローの分配権の所有者を変更しても、分配されるキャッシュフローの総額は変化しない場合(有利子負債を株主資本の代わりに用いる場合や、自社株を取得するために有利子負債を発行する場合)には、企業価値は維持され変化しない。同様に、たとえば、会計手法の変更などによってキャッシュフローの見え方が変わったとしても、キャッシュフローが実質的に変わっていなければ、企業価値は不変である。


第3の原則
 株価は企業の業績(成長率、ROIC、そしてその結果としてのキャッシュフロー)だけではなく、株式市場の期待の変化に左右される
=「期待との際限なき闘い(expectations treadmill)」

 大きな企業価値を創造するような素晴らしい戦略を実行していても、株式市場がその戦略の成功をすでに織り込んでいる場合、高い株主に対するリターンを達成することは期待できない。取締役会はこのことを理解すれば、たとえ自社の株価が短期的に優れたパフォーマンスを上げていなくても、価値創造を優先する経営陣の取り組みを支援できるだろう。


第4の原則
 事業の価値は、だれが経営しどのような戦略をとるかにかかっている
=「ベスト・オーナー(best owner)の原則

 事業の価値は、だれが事業を所有するか、もしくはだれが経営するかによって決まるというものである。なぜなら、オーナーが異なれば同じ事業から生まれるキャッシュフローは異なったものになるからだ。

 最も大きなキャッシュフローを生み出せる者が事業を所有するときに、最大の価値が生み出される。その結果としていえることは、ある事業の固有の価値というものは存在しないということである。事業の価値は常に、だれが事業を運営するかによって決まるのだ。

ベスト・オーナーに求められる要件

 1.事業ポートフォリオにある他の事業との連携
 2.すべての(もしくはほとんどの)事業部に適用できる、差別化されたスキル
 3.市場環境に対する優れた洞察・先見性
 4.優れた企業ガバナンス
 5.人材、資本、政府、納入業者、顧客への特別なアクセス

 取締役会と経営陣が自社のポートフォリオ内の事業の価値を最大化しようと思うのであれば、自社が各事業(および、ポートフォリオに追加される可能性のある事業)にどう付加価値を与えるのかを明確にしなければならない。自社の事業ポートフォリオを見直す際には、少なくとも自社がベスト・オーナーとして生み出す価値の源泉を、具体的に理解しなければならない。また、他社がより優れたオーナーとなる可能性も考慮する。そしてベスト・オーナーとしての源泉は、静的なものではない。自社がベスト・オーナーとしてもつ価値の源泉を進化させていくためにはどのような意思決定が可能か、絶え間なく問い続けていく必要がある。 』(太字は筆者)


 マッキンゼーの人たちが考えるファイナンスの4つの原則の内、第4の「ベスト・オーナーの原則」が最も企業価値向上に繋がるのではないか。

 ベスト・オーナーであり続けるためには、自社の価値の源泉を具体的に理解する必要があるのは間違いなく、全てはここから始まると思われる。


----------------------------------------------------------------------
 元証券マンが「あれっ」と思ったこと
 『まぐまぐ!』へのご登録はこちら
 http://www.mag2.com/m/0001677393.html
 発行者HP http://tsuru1.blog.fc2.com/
----------------------------------------------------------------------
by tsuruichi1024 | 2016-12-21 08:00 | コーポレート・ファイナンス | Comments(0)