あれっ、アメリカでは四半世紀前から企業価値評価を重視?


企業価値評価 バリュエーションの理論と実践 第6版上
(マッキンゼー・アンド・カンパニー、ダイヤモンド社)
2016年8月25日 第1刷発行


 キャッシュフローの開示2000年から始まり、東証から「コーポレートガバナンス・コード」(http://www.jpx.co.jp/equities/listing/cg/tvdivq0000008jdy-att/code.pdf)が発表されたのが2015年6月

 原書がマッキンゼーから出されたのが既に四半世紀以上も前のこと。米国では当時から企業価値評価が重視されていたことがわかる。

 マッキンゼーの人たちが考える「本書を通じた意義」を学んでみたい。



『 訳者まえがき Introduction


 第5版からの改訂のポイント


 第6版では、第5版の内容に加え、企業価値評価の実務において近年よく用いる、多様な事業を抱える企業の価値評価方法を第17章「事業単位ごとの企業価値評価」でとりあげた。加えて、第21章「資産収益率を測定する別の方法」においては、IFRS適用やスタートアップの増加による、発生時点で費用計上される研究開発費への対応や、必要資本が非常に小さい事業の評価手法について説明している。これらはいずれも、最近の企業価値評価における実務家のニーズに応えるものである。



 日本における企業価値――25年超の振り返り

 原書Valuationの出版から今日まで、日本企業における企業価値の見方は大きく変わってきた。

 初版出版当時、日本はバブル崩壊後まもなくであった。キャッシュフローの開示も行われておらず、そもそもキャッシュフローとは何かすら十分認知されなかったように思う。その後、1997年のDIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー誌における“キャッシュフロー経営”特集をきっかけに、企業価値を想像する経営が注目されるようになった。経営の視点が、会計上の利益確保から真の儲けであるキャッシュフローの確保へ転換したといえるだろう。2000年からは財務諸表におけるキャッシュフローの開示も始まり、経営の場でキャッシュフローが論じられるようになった。キャッシュフローという概念は、日本企業経営に定着してきたようである。

 一方、企業価値キャッシュフローほどにはいまだ定着していないように思われる。これは、英語の“Value”が定量的な意味合いをもつのに対して、その訳語として一般的に用いられる日本語の“価値”に定性的な意味合いが強いからであろうか。企業価値を向上する重要性に異を唱える方はいないが、企業価値を定量的に測って戦略を策定し、大胆な価値向上を目指すというところまで至っていないのではないか。

 確かに、この10年で経験した、米国に端を発する日本でいうところのリーマンショックおよび欧州のソブリン危機という2度の経済金融危機においては、企業価値の1つのものさしになるべき株価が、変動が大きすぎて有意義な指標となり得なかったのは事実である。それでも現在、日本企業が保有する現預金や短期保有の有価証券総額が、日本企業年間投資総額約6倍にものぼるまでになっているのは、資金調達に困難を極める状況でないことを考えると、異常といってよいのではないだろうか。

 日本では今後人口減少し、高齢化が急速に進展して国内市場の成長が見込めない中で、グローバルな市場において企業価値向上させる経営が求められている。ところが、日本ではコーポレートガバナンスの機能がいまだに大変弱い。今後は機関投資家個人投資家からの要求が高まる可能性は大である。株主によって、企業が事業の一部売却について検討を求められることも想定される。

 そうした事態に対応していくためにも、企業価値を大きく向上させる戦略を策定し、それによる実際の企業価値の向上について経営レベルで活発な議論がなされ、日本企業の成長につながることを望みたい。そのための考え方着眼点を、この第6版が提供できれば幸いである。

2016年8月 訳者 マッキンゼー・コーポレート・ファイナンス・グループ 』(太字は筆者)


・日本企業の成長につながる、企業価値を大きく向上させるための戦略策定について、経営レベルで活発な議論がなされるような考え方や着眼点の提供、が本書の目的であるようだ。


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by tsuruichi1024 | 2017-01-06 08:00 | 企業価値 | Comments(0)