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あれっ、日本の軍事協力がグローバルに拡大?


「在日米軍 変貌する日米安保体制」(梅林宏道著、岩波新書)


 以下は掲題書(序章「在日米軍と日米軍事協力の新段階」)からの一部抜粋。(その2)


  米軍海外基地の正体

 「代替資産価値」が10万ドル以上の基地を仮に「大型基地」と分類すると、海外に有する米軍の大型基地の総数は36か所であり、その数のトップ4は、日本(13)、ドイツ(7)、韓国(5)、イタリア(3)の順となる。この四か国で世界の大型米軍基地の八割近くを占める。

 四つの国になぜ米軍基地が多いのか?その理由は明らかであろう。ドイツ、イタリア、日本はいずれも第二次世界大戦において敗北した枢軸国であり、戦後、占領軍として米軍の支配下にあった。

 朝鮮半島は戦時には日本の植民地支配下にあり、連合軍の分割統治によって38度線以南に生まれた韓国は米軍によって占領された。つまり、米軍基地の出生の正体は敗戦国への米軍駐留であり、その既得権を米国は今も手放さないでいるのである。朝鮮半島の分断はもちろん、韓国における米軍基地の存在もまた日本に責任があることを、私たちは忘れてはならないであろう。


  日米軍事協力のグローバル化

 2017年2月10日、安倍首相とトランプ米大統領が発した日米共同声明は、次のように始まった。

 「揺らぐことのない日米同盟はアジア太平洋地域における平和、繁栄および自由の礎である。核および通常戦力の双方による、あらゆる種類の軍事力を使って日本を防衛するという米国の約束は揺るぎない。アジア太平洋地域において厳しさを増す安全保障環境の中で、米国は地域におけるプレゼンスを強化し、日本は同盟におけるより大きな役割および責任を果たす。」

 この一節は、今日の日米安保体制を考える際に留意すべき2つの重要な特徴を持つ示している。

 1つは、在日米軍はもはや日本を防衛対象とした米軍ではなく、アジア太平洋全域を対象とする米軍になっているということである。

 在日米軍が日本の領域の外に移動すれば、それはもはや在日米軍ではなくてただの米軍であって、どこで何をしてもよいもいう理屈である。ただし、日本の防衛が第一義的な任務なので、その条件が満たされることを条件とした。日本の外務省のこのような見解は、独立国として米軍の行動を縛るという、1960年の日米安保条約改定時の議論をまったく無視したものであるが、それが今日の在日米軍の現実となっている。この意味では、米軍は法的基盤である日米安保条約とほとんど無関係に行動していると言える。

 これと関連して、今日の日米安保体制にはもう1つの重要な特徴がある。それは、日米安保体制下における日本の軍事的な役割と責任もまたグローバルに拡大しているという事実である。日本の軍事協力が行われる地理的範囲は、「日米防衛協力のためのガイドライン」の改訂とともに拡大されてきた。米軍はガイドラインを明確化することによって、「在日米軍基地の安定的確保」と「自衛隊の役割の強化」という2つの目的を追求してきた。このうち自衛隊の役割分担への要求は、米軍の財政難が増大することと比例して強まっていった。

 2015年の改訂では、安倍政権の戦後日本の平和体制を否定する政策と軌を一にして、日米軍事協力の分野は地理的にも内容的にも一気に拡大した。ガイドラインの目的に、日本の防衛に加えて「アジア太平洋地域及びこれを越えた地域が安定し、平和で繁栄したものとなる」という目的が明記されたのである。

 結果として、日本の自衛隊と米軍との協力は地理的に無制限となった。大きな反対世論の結果、新安保法制は集団的自衛権の行使について厳しい条約が付けられた。しかし、厳しい条件下であるにせよ集団的自衛権の行使が容認されたことによって実質的な変化が起こる。その最前線が日米軍事協力の新しい訓練であろう。実際2017年には、2005年以来参加している多国間共同訓練コブラゴールドにおいて初めて邦人救出と同時に米国人を含む訓練が行われたり、「武器等防護」の一環として米艦を自衛艦が防護する任務が始まった。


<感想>
 日本の軍事的な役割と責任がグローバルに拡大している。緊迫を増す北朝鮮への日米共同による確りした対応を、小野寺防衛大臣に期待する。

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元証券マンが「あれっ」と思ったこと
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by tsuruichi1024 | 2017-08-04 08:00 | 在日米軍 | Comments(0)