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あれっ、国務大臣の約半数を民間人にしてみる?


【 大直言(青山繁晴×百田尚樹) 】(その2)



 以下は、「大直言」(青山繁晴・百田尚樹著、新潮社)第2章「外交を議論する」からの一部抜粋。


『  官僚が敗戦を招いた

百田 海軍兵学校を卒業するときのペーパーテストの順位のことをハンモックナンバーと言うんですが、この順位がその後にもつきまとう。つまり、その順番に偉くなる。途中で才能を見抜かれて出生する、ということもなければ、逆に能力が低いから左遷されるということもない。二十歳くらいの時のペーパーテストがその後の人生を左右するわけです。

 しかし、実際の戦場に「正解」なんてあるはずがありません。何が起こるのかわからないのが戦場です。だから当時、司令官だった中将、大将あたりが、あたふたして何もできなかったケースがものすごく多かったんです。

青山 そのとおりです。そして大きな問題は、さきほど申し上げたようにすでに戦後世界が壊れて、さらに正解、模範解答はない世界になっているということなんです。アメリカが超大国として支配する構造が終わりつつあります。


 中小の商社マンたちは、地べたを這いずりまわりながら、世界中で売れそうにないものを売ってきた。彼らの凄いのは、巨大商社のようなカラクリもないなかで売ってきたという点です。カラクリというのは、相手国の巨大な既得権益との深い癒着です。中小商社にはカラクリをつくれるだけのカネがない。

 じゃあ彼らは何を武器にしているか。人間力です。本当にそうなんです。

 日本にはまだそういう人材がいるんだから、官民の交流をやればいいんですよ。アメリカのこれまでの強さは、官民交流人事のお陰という面があります。政権交代の時が顕著ですが、官僚はどんどん辞めて民間に移籍するし、逆に民間からどんどん政府にも入ってくる。

 これは建国からの歴史が浅い国だから出来たということもあるんですが、せっかくアメリカと仲がよい日本なんだから、良き制度は採り入れればいいんです。そうすれば外務省は音を立てて変わりますよ。

 こんなことは大臣によってはすぐにできます。ただし、岸田さんでは駄目です。八方美人で、安倍さんからの禅譲を狙っているような人では。

 あえて言えば、民間から外務大臣を登用していいと思う。


  正解のない問題に対応する能力を

百田 たしかにそのへんはアメリカに学ぶべきことはありますね。たとえば日本軍を徹底的にやっつけたニミッツ太平洋艦隊司令長官も、海軍兵学校での成績はトップではなかった。ところが実際に軍に入ってからは優秀なので、三十人近くゴボウ抜きで司令長官にまでなったんです。

 実はアメリカも平時には試験の成績で出世していきますが、いったん戦争のような何が起きるかわからない状況になると、そんなものは関係なくなる。答えの出ない状況でいかに臨機応変に答えを出すか。ここを見るんです。

 日本は、戦後七十年、まったくそれがないですね。だからあれだけ優秀だったはずの官僚が、経済政策や金融政策でどれだけ失敗してきたか。ぼくらの頭脳をはるかに超えるペーパーテストの成績を取りながら、こんなこともわからないのかということをいっぱい見てきました。

青山 おっしゃった人事の妙というのは、結局、軍事にも外交にも全部当てはまることですよね。人事が権力であり、権力は人事ですから。

 百田さんのお話を補えば、かつての日本ではそういう人事もあったんです。日露戦争でバルチック艦隊をうちのめして、世界を驚愕させた連合艦隊の司令長官を務めた東郷平八郎元帥は、その前まで冷や飯を食わされてたんです。しかし、軍の内部から「戦時には、この男が必要だ」という声があがり、実質的に引退状態だった東郷さんを呼び戻した。

百田 その東郷さんが、当時、回線では誰もやらなかった「T字戦法」を展開したわけですよね。まったく模範解答とは異なる作戦でバルチック艦隊を壊滅させた。ちなみにこれ以後、「T字戦法」は回線の常識になります。

青山 それを要するに保守本流じゃない頭脳を持ってたからなんです。日本でも、江戸期の教育を受けた人材がまだ健在な頃は、そういう大胆な発想の転換ができました。

 明治維新は、ぼくは世界に誇れる偉業だと思っています。それを全否定する向きもありますが、そんなことはないと思う。それは世界を歩けば歩くほどにわかる。

 でも、間違いもあった。特に教育です。西洋の真似をして年齢で輪切りするようになった。その教育を受けた世代から、ペーパーテストの成績を重視するようになり、しかもそれを戦時にも適用してしまう人事がまかり通った。これがその後の敗戦につながるわけです。』


[日本国憲法]
第六十八条  内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。但し、その過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない。
2 内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる。


<感想>
 政治、外交のみならず、あらゆる分野で、如何に正解のない問題に適時適切に対応できるかが重要な時代になっている。憲法第68条第1項では、内閣総理大臣は国務大臣の過半数は国会議員の中から選ぶことが規定されている。青山議員の言う官僚の官民交流に留まらず、10月に見込まれる衆院解散・総選挙後、思い切って大臣の約半数を民間人にしてみたら、失われた四半世紀から脱せられる可能性は増えるのではなかろうか。

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元証券マンが「あれっ」と思ったこと
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by tsuruichi1024 | 2017-09-19 08:00 | 青山繁晴 | Comments(0)