悲しき歌姫 藤圭子と宇多田ヒカルの宿痾(大下英治著、イースト・プレス)より
 2013年11月1日 初版第一刷発行


『「悲しい歌はすごい歌いやすいんですけどね。 わたしの持ってる魂の色は、よっぽど悲しい的なもんなんだろうな、と思いました」

 「う~ん、遺伝とかもちょっとあるのかなあ。さすがにあの母の子だなみたいな。あの母親にしてこの子ありなとこはちょっとあるなって自分でも思いますね」

 「私が曲をつくる原動力って結局“恐怖”と“哀しい”と“暗い”なんですよ、全部」


 ヒカルの知人が言っているという。

 「ずっと考えないようにして生きてきたことの答えを改めて問うて見ると、父親への疑心が生まれてきたそうです。父親は母親のことを悪く言っていたが、自分のことをいちばんに考えてくれたのは母親の方ではなかったのか。あんなによくしてくれた祖母が疎遠になったまま死んで、墓参りにさえ行けないのはなぜなのか。そのまま日本にいて仕事を続けていたら、どうしても父親とかかわらざるをえない。ロンドン移住は照實さんと距離を置くためだったそうです


 かつてヒカルは「音楽をやっている自分をどう思うか」と訊かれて、こう答えている。

 「呪いです」

 辛い道だが、ヒカルは歌手として再び、崖っぷちの厳しい道を歩み続け、光を放出し続ける宿命を負っている。』(太字は筆者)



Be My Last」(作詞:宇多田ヒカル)より
 2005年9月28日リリース

 母さんどうして
 育てたものまで
 自分で壊さなきゃならない日がくるの?


嵐の女神」(作詞:宇多田ヒカル)より
 2010年11月24日リリース

 嵐の女神 あなたには敵わない

 お母さんに会いたい

 分かり合えるのも 生きていればこそ
 今なら言えるよ ほんとのありがとう


桜流し」(作詞:宇多田ヒカル)より
 2012年11月17日リリース

 もし今の私を見れたなら
 どう思うでしょう
 あなた無しで生きてる私を

 Everybody finds love
 In the end


真夏の通り雨」(作詞:宇多田ヒカル)より
 2016年4月15日リリース

 汗ばんだ私をそっと抱き寄せて
 たくさんの初めてを深く刻んだ

 いつになったら悲しくなくなる
 教えて欲しい

 今日私は一人じゃないし
 それなりに幸せで
 これでいいんだと言い聞かせてるけど

 変わらない気持ちを伝えたい

 愛してます 尚も深く


NHK SONGS」より
 2016年9月22日放送


 自分が親になって自分の子どもを見てると
 自分の空白の2,3年が見えてくる

 「私こんなんだったんだな」
 「こんなことを親にしてもらって」
 「こんなことをしてて」

 親に対する感謝
 「自分がどこにいるのか」見えた瞬間



」(歌詞:宇多田ヒカル)より
 2016年9月27日発売

 わたしの心の中にあなたがいる
 いつ如何なる時も
 一人で歩いたつもりの道でも
 始まりはあなただった

 It's a lonlely road
 But I 'm not alone
 そんな気分


 宇多田ヒカルにとっての母の存在が良い方向に変わって行くのがわかる


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by tsuruichi1024 | 2016-12-08 08:00 | 宇多田ヒカル | Comments(0)


宇多田ヒカルにとっての母


 藤圭子は、喉の手術の5年後に引退する。


「流星ひとつ」(沢木耕太郎著、新潮社)より

 「もう・・・・・・昔の藤圭子はこの世に存在してないんだよ」

 「喉を切ってしまったときに、藤圭子は死んでしまったの。いまここにいるのは別人なんだ。別の声を持った、別の歌手になってしまったの・・・・・・」

 「その手術が、あたしの人生を変えたと思う。よいとか悪いとか言いたいわけじゃなくて、結果として変ってしまったと思うんだ。引退ということの、いちばん最初のキッカケは、この手術にあるんだから・・・・・・」

 「五年前。手術前のビデオがあれば、あたしも見たいんだ。違うんだ、ほんとに」
 「見たら、あたしの悩みがわかってくれると思うよ。だから、この五年間、苦労してきたんだもん。みんなが持っているあたしのイメージと、歌のイメージと、それもうすっかり変ってしまったあたしの声を、どうやって一致させるかってことを・・・・・・。可哀そうなあたし、なんてね」

 「この五年、歌うのがつらかった」

 「勉強しようと思うんだ、あたし」


 藤圭子は、2013年8月22日に飛び降り自殺を図った。


日本テレビ「NEWS ZERO」より

 歌手活動休止中の宇多田ヒカルが、母の死後、初めて作詞したのが「真夏の通り雨」。
 インタビューの中で、“あなた”というのは“母親”であると語っている。


「真夏の通り雨」(作詞:宇多田ヒカル)より

 あなたに思い馳せる時
 いつになったら悲しくなくなる
 教えてほしい

 あなたに思い馳せる時
 今あなたに聞きたいことがいっぱい
 溢れて 溢れて

 愛しています 尚も深く

 夢の途中で目を覚まし
 瞼閉じても戻れない
 さっきまであなたがいた未来
 たずねて 明日へ


 宇多田ヒカルの歌には、母の果たせなかった辛い思いが込められているように思えてならない。


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by tsuruichi1024 | 2016-12-01 08:00 | 宇多田ヒカル | Comments(0)