【 出光興産の新株発行(公募増資) 】



 2017/7/3、出光興産(5019)は4800万株(発行済株式数の30%)の新株発行(公募増資)を発表した。http://www.idemitsu.co.jp/company/news/2017/170703_2.pdf

 これに対して、出光創業家側(議決権比率33.9%)は、新株発行の差止めの仮処分を申し立てる模様。

 両者の主張はどういうものになりそうか。

1.出光創業者側
・資金調達目的に合理性がなく、議決権希釈化目的で忠実義務違反の「著しく」不公正な発行で、新株発行は認められない

2.出光興産側
・資金調達目的に合理性があり、議決権希釈化目的の(著しく)不公正な発行(忠実義務違反)ではなく、新株発行は認められる


  「募集株式の不公正発行について」

 以下は、添付HPからの一部抜粋。
http://www.tosyodai.co.jp/topics/nakamura/063/

『 本当のポイントは、
1.目的が何であるかは、「著しく不公正な方法」のいち事例に過ぎないこと(他にも著しく不公正な方法はあり得ること)、
2.支配権奪取目的は忠実義務に違反するから著しく不公正となること(逆に忠実義務に違反しなければ不当目的ではないこと)、
3.資金調達目的は正当な目的であるが、それだけが正当な目的であるわけではなく、他にも正当な目的はいくらでもありうること(両者を等視してはいけないこと)、
です。 』


<感想>
 これから、裁判所において、両者の主張が展開されるであ
ろうが、主張内容と判決結果をウォッチして行きたい。

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元証券マンが「あれっ」と思ったこと
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by tsuruichi1024 | 2017-07-05 08:00 | 出光佐三 | Comments(0)


海賊と呼ばれた男



 先日、映画「海賊と呼ばれた男」を見た。

 以前から、百田尚樹著の同名小説や出光佐三氏(以降、「店主」)関連の本は何冊か読んでいた。

 以来、ガソリンは出光で入れることにしている。



「出光佐三 不景気、大いに結構」

 文藝春秋 創刊90周年記念(2013年1月)で、元出光興産会長の天坊昭彦氏が、「出光佐三 不景気、大いに結構」と題して、以下内容を語っている。


『 店主は、欧米の石油メジャーの独占的な支配に反発し、「メジャー何するものぞ」という反骨精神を強く持っていました。その象徴といえるのが、百田さんの小説の題材にもなった昭和28年の「日章丸事件」です。

 発端は大産油国のイランが、イギリスに支配されていた石油を国有化すると宣言したこと。これを認めないイギリスは、「イランから石油を買う国のタンカーは拿捕する」と脅します。店主はこれに屈せず、出光最大のタンカー「日章丸二世」を極秘に派遣したのです。船はイギリス海軍の監視をかいくぐって、ホルムズ海峡を往復。ガソリンと軽油を運ぶのに成功したのです。ところがイギリス側は積み荷の所有権を主張して提訴してきました。店主は東京地裁の法廷にたって、

「この問題は国際紛争を起こしておりますが、私としては日本国民の一人として、俯仰天地に愧じない行動をもって終始することを、裁判長にお誓いいたします」

 結果は全面勝訴となり、敗戦後の占領から脱したばかりの日本人に、大きな勇気を与えたのでした。

「事業は金儲けのためにやるのではない、人の役に立つためにやるんだ。そして仕事を通じて人を育てるのが会社の使命なんだ」というのが店主の変わらぬ信念でした。

 また、「不景気大いに結構。天下大乱いいじゃないですか」

 とも言っています。

「ぼくは楽観主義です。人間ちゅうものは苦労しなけりゃだめ。苦労すればするほど立派になる。人間尊重のぼくに言わせりゃ、大きく行き詰まれば、大きく道が開けるということです」

 当意即妙なやり取りも得意でした。88歳で白内障の手術をしたあと、岸信介元総理がお見舞いにいらっしゃたそうです。「どこまで見えるのか」と尋ねられ、「君の腹の黒いのがよく見えるよ」と答えたとか(笑)。

 また店主は明治人らしく、皇室を厚く敬っていました。昭和56年に95歳で亡くなった際、天皇陛下が悼んで御歌を詠んで下さいました。

「国のため ひとよつらぬき尽くしたる きみまた去りぬ さびしと思ふ」

 店主にとって何にも代えがたい喜びだったと思います。 』(太字は筆者)


 「事業は金儲けのためにやるのではない、人の役に立つためにやるんだ。そして仕事を通じて人を育てるのが会社の使命なんだ」という店主

 また、天皇陛下からも御歌を頂いた、皇室を厚く敬っていた店主だった。


九十歳でもゴルフはできる

 「男の生き方」40選(城山三郎編、文春文庫)で、店主は城山三郎と対話をしている。

『 九十歳でもゴルフはできる  出光佐三

 それから大変だったのは戦後だよ。終戦後しばらく、いろんな事情で出光は石油業に復帰を許されなかった。そこへもってきて、兵隊に行っとったもんや、海外で石油の配給やっておったもんが、千人ほど帰って来た。

 千人帰って来た時に、重役会で、「あれを一応クビ切って再建を図りましょう」いうことをある重役がいうた。そん時にゃ、ぼくは怒鳴りつけたね、「バカーッ」ちゅうた。

「貴様みたいなやつはここにくなッ」ちゅうてね、怒鳴りつけた。そして千人全部、一人もクビ切らんでぼくはひっかかえました。家族主義の情愛と同時に、出光の資本はじゃない、出光の資本はだ、苦労してきた人間資本を棄ててどうなるんか、おれは抱えるちゅうてね。周りの経営者からは、バカと言われましたよ。

 抱えたのはいいけど、しかし、金もないしやる仕事もない。その時にね、旧海軍の、貯蔵地下タンクに相当量の泥廃油が放置されておる、あれを集油してくれんかという話が来た。徳山、呉、佐世保なんかの地下タンクの底に泥みたいになって、石油が少し残っとるわけなんだ。戦争末期、いよいよなくなった時に海軍の方であれを上げたらちゅうことでやりかけたけど、悪性のガスがたまったりしてて、さすがに手がつけられなかったほどのものなんだ。誰もやり手がない。実を言うと、出光にこの仕事をやれせて、大欠損を与えてつぶすというのが目的だったらしい。

 それなら意地でもやってやると言って引き受けた。もう全員が全力投球してね、ふんどし一つでタンクの底にもぐりこんで、まっ黒になって油を汲み出しながら、とうとうやり遂げた。それを見ていた正金銀行の門司の支店長が、これはたいしたもんだというて出光に金を貸してくれるようになった。

 今でも、だから、何か苦しいことがあると社員の方がぼくに言うですよ。「もう一度、タンク底にもぐりましょう」って。

 馘首がない、定年制がない、組合がない、出勤簿がない、罰則がない、給料を発表しない、残業手当を社員が受け取らない、世間じゃ、“出光の七不思議”というとるそうですね(笑)。バカみたいな会社だと(笑)。もう一つつけ加えると出光には金もない(笑)。あるのは借金ばかり(笑)。

 出光は石油業やってるんじゃない、石油業を利用して、人間さえしっかりしておれば、こんなに立派にいくぞという人間のあり方を社会に知らすということが目的なんだ、出光の仕事は人間を作るということなんだ、金儲けしちゃいかん、社員に、いつもそう言っているんです。 』(太字は筆者)


出光の資本はじゃない、出光の資本はだ、苦労してきた人間資本を棄ててどうなるんか、おれは抱えるちゅうてね」

 店主のこれらの言葉、現在の、会社と店主一族の「昭和シェル石油」との統合に関する対立。
 対立の構図を単純化すると・・・

 「昭和シェル石油」との統合を目論む会社
 ・・・金儲けのため(の統合)

 店主一族
 ・・・「メジャー何するものぞ」という反骨精神を強く持ちつつ(メジャーとは距離を置いた独立独歩の)仕事を通じた人を育てる風土を守るため(の統合反対)


 店主もメジャー(ロイヤル・ダッチ・シェル傘下のシェル・ペトリアム)が筆頭株主だった会社との統合は到底受け入れられなかっただろう。

 ここに昭和の良き会社がまたひとつ無くなりそうだが、社員一人ひとりが店主の心持ちは忘れることのないよう、祈念している。


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by tsuruichi1024 | 2016-12-29 08:00 | 出光佐三 | Comments(0)