【 黒田日銀総裁の苦悩(2) ]

 (昨日に続き)2017/5/27付け添付講演にも、黒田日銀総裁の苦悩が見て取れる。

【講演】金融市場に関する理論と中央銀行
 日本金融学会2017年度春季大会における特別講演

(@日本金融学会2017年度春季大会)
 
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2017/ko170527a.htm/

[ 金融市場とは ]
・理論と現実が交差する場である
 ⇒金融市場が理論通りに動くこともあるが、理論の予想するところとは異なるケースも少なくない

[ 金融市場に関する伝統的な理論 ]
1.本源的な価値
・本源的な価値※に基づく理論は市場価格の評価や分析の基礎・出発点として、大きな意義あり
※例1)株価:企業の将来収益の現在の価値で評価したものが基本
 例2)長期金利:「将来の短期金利予想値の平均」+「タームプレミアム」
 例3)為替:長期的な為替レートの変動については内外の物価上昇率格差が反映される(購 買力平価が基準値を形成)
 ⇒しかし、実際の金融市場では、理論通りには行かない

2.効率的な市場
・商品間や市場間の関係に着目して、公正で透明性の高い金融市場において形成される価格に、裁定機会は残らないとするもの

[ 中央銀行と市場の関わり ]
1.市場機能の維持・向上
・2016/9以来、短期政策金利を▲0.1%としたうえで、10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう国債買入れを行う、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)を実施
 ⇒長短金利の水準を、イールドカーブ全体と整合的に結び付ける接点が市場メカニズム

2.非伝統的金融政策と金融市場
・伝統的な金融政策(短期国債の売買→長期金利や他の金融資産の価格に影響)
〈名目短期金利の「ゼロ金利制約」下での経済の大幅な落ち込みに対応するため〉
・非伝統的な金融政策(長期国債やCP、社債(リスク性資産)の買入れ→長期金利や各種リスク・プレミアムに直接的に働きかけ)


<感想>
 伝統的な金融政策が通用しない、ゼロ金利制約下での、黒田総裁の挑戦(心理的なインフレ期待の醸成)はこれからも継続する。

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by tsuruichi1024 | 2017-06-17 08:00 | 日銀 | Comments(0)


【 黒田日銀総裁の苦悩 】

 2017/6/8付けの以下講演に、黒田日銀総裁の苦悩が見て取れる。

【講演】「期待」に働きかける金融政策:理論の発展と日本銀行の経験(at オックスフォード大学) 
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2017/ko170609a.htm/


[ 黒田日銀総裁の金融政策 ]

 2013/3(日銀総裁就任) 「量的・質的金融緩和」を導入
  1)2%の「物価安定の目標」を掲げて
  2)大規模に長期国債を買入れ

 2016/1 「マイナス金利政策」を導入

 2016/9 「イールドカーブ・コントロール」(オーバーシュート型コミットメント)を導入

 ⇒「量的・質的金融緩和」は、「非伝統的金融政策」だが、

 1)期待への働きかけの重要性に関するホートレーの理論と
 2)長期国債の買入れによって金融緩和を行うことが可能であるというケインズの理論

 の現代的な発展であると言える(黒田総裁)


[ 低インフレ下における新たな課題 ]

 「低インフレ環境下において、ゼロ金利制約のもとで、インフレ期待をどのように適切に管理(manage)していくのか」という新たな課題に直面


<感想>
 かつての政策(インフレ抑制の為の金利引き上げ)とは真逆の、低インフレ下において「心理的なインフレ期待」を人々の間にどのように定着させて行くのか、黒田総裁の挑戦は今後も継続する。

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by tsuruichi1024 | 2017-06-16 08:00 | 日銀 | Comments(0)


<日銀のバランスシート>
(出所:https://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/acmai/release/2017/ac170220.htm/

(2017/2/20現在)
総資産  484兆円
 内、国債 417兆円(86.1%)・・・(a)
 (長期国債374兆円、国庫短期証券43兆円)

負債
 発行銀行券 99兆円(20.4%)
 当座預金 327兆円(67.6%)
 政府預金  37兆円( 7.7%)


<国債発行残高>

(出所:http://www.mof.go.jp/jgbs/issuance_plan/fy2017/gaiyou161222.pdfのP5)

平成28年度末 941.5兆円・・・(b)

(a)÷(b)= 44.3%
(a)-(b)=525兆円


<通貨発行益>
(出所:https://www.boj.or.jp/announcements/education/oshiete/outline/a24.htm/

 日本銀行の利益の大部分は、銀行券(日本銀行にとっては無利子の負債)の発行と引き換えに保有する有利子の資産(国債、貸出金等)から発生する利息収入で、こうした利益は、通貨発行益と呼ばれます。

⇒ お札通貨発行券として負債計上され、お札を刷るコストとの差額が「通貨発行益」となる訳ではない。


<感想>

 連結ベースでの考え方(日銀は日本国の連結子会社のようなもの)によれば、(ネット)国債発行残高はざっくりGDPの1倍程度で恐れることはない。

 ゼロ金利
を活かした積極的な財政政策(by 国債)による、景気浮揚策の導入を望んでいる。


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by tsuruichi1024 | 2017-03-03 08:00 | 日銀 | Comments(0)


日本株、日銀が最大の買い手 今年4兆円 海外勢の売り吸収


 上記は、2016/12/25の日本経済新聞1面の表題。以下は記事の内容。

『 2016年、日本株の最大の買い手は日銀――。12月半ばまでの投資部門別売買動向を基に集計したところ、日銀の上場投資信託(ETF)購入額が4兆3千億円超と他部門を上回り最大になることが確実になった。昨年に比べ4割増え、外国人投資家の売りを吸収した。

 年初からの日銀発表東証集計の投資部門別売買動向を基に比較した。16年1月から12月第2週(12~16日)までの累計売買では、外国人が3兆5千億円強を売り越した半面、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)などの売買を含む信託銀行が約3兆5千億円を買い越した。一方、日銀は22日までにETF4兆3千億円購入しており、信託銀を上回り「今年最大の買い手となる」(みずほ証券の菊地正俊氏)。 』(太字は筆者)


  この記事の内容は正確か?

1.出所が違う(東証の集計値と日銀の発表数値)数値同士を比較している

2.比較対象が違う物同士(投資部門別の株式売買額と日銀のETFの購入額)を比較している


 記事を読むと、海外勢の売りを日銀がカバーしているように見える。

 東証集計は「投資部門別 株式売買状況 東証第一部 [金額]の売り買いネット金額」(http://www.jpx.co.jp/markets/statistics-equities/investor-type/00-01.html)で、日銀発表は「ETFの買入結果」(http://www3.boj.or.jp/market/jp/menu_etf.htm)。

 日経1面には、同じ表の中に計測ベースの違う上記数値が同じ土俵で比較されてもいるが、日銀のETFの買入では外国人投資家の東証1部の株式の売りを直接吸収することはできないため、「吸収した」と断言するのは言い過ぎか。

 また、日銀が信託銀行を上回り「今年最大の買い手となる」とあるが、信託銀行の数値も東証1部の売り買いネット金額であり、日銀のETF買入額と比較するのはやや強引過ぎないか。


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by tsuruichi1024 | 2016-12-31 08:00 | 日銀 | Comments(0)