【 最高裁の違憲判断に基づいた法律の改正 】


 以下は、2017/9/28の日経新聞朝刊からの一部抜粋。


『 
合区で是正を評価 1票格差「合憲」
  改革継続求める


 「1票の格差」が最大3.08倍だった昨年7月の参院選について、最高裁判決は27日、格差縮小などを理由に「合憲」と判断した。隣り合う県の選挙区を統合する「合区」を初導入した国会の取り組みに及第点を出した形だが、格差是正のため選挙制度の抜本的見直しを続けるよう念を押した。


 参院選の格差は長年5倍前後で推移した。最高裁は小規模な定数改正を繰り返すだけの国会に業を煮やし、2010年参院選(5.00倍)と13年参院選(4.77倍)について「違憲状態」と判断。「都道府県単位の現行方式を改めるなど、選挙制度の仕組み自体の見直しが必要だ」と踏み込んで言及した。

 追い込まれた国会は「鳥取・島根」「徳島・高知」を合区するなどして格差を3.08倍に縮め、昨年7月の参院選が行われた。しかし、選挙の効力に関する訴訟の一審となる高裁段階では、違憲状態が10件、合憲が6件と判断が分かれた。


 改正公職選挙法は19年参院選に向けて選挙制度の抜本的な見直しを検討し「必ず結論を得る」と付則に明記。最高裁判決はこの付則について「立法府の決意が示され、再び大きな格差を生じさせることのないよう配慮されている」との解釈を示し、さらなる格差是正を事実上求めた。国会が格差是正を怠れば、最高裁が厳しい判断に転じる可能性もあり、与野党は議論を急ぐ必要がある。』


 一方、2017/9/27の最高裁判所の判決*の概要は以下の通り。
 *
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/094/087094_hanrei.pdf

1.経緯

(1)参議院議員選挙法(昭和22年法律第11号)
・参議院議員250人:全国選出議員100人+地方選出議員150人
⇒憲法が参議院議員につき3年ごとにその半数を改選する
⇒定数を偶数として、各選挙区の人口に比例する形で、2人~8人の偶数の議員定数を配分

(2)昭和25年に沖縄県選挙区の議員定数2人を付加

(3)昭和57年改正
・各政党等の得票に比例して選出される比例代表選出議員100人+都道府県を単位とする選挙区ごとに選出される選挙区選出議員152人に
⇒従来の地方選出議員の名称が変更されたもの(4)平成12年改正
参議院議員の総定数242人:比例代表選出議員96人+選挙区選出議員146人に


2.選挙区間の最大較差(選挙区間における議員1人当たりの人口の最大較差)

(1)当初2.62倍⇒平成4年選挙6.59倍へ(人口変動により次第に拡大)

(2)平成6年改正
・7選挙区の定数を8増8減⇒最大較差は4.81倍に縮小

(3)平成12年・平成18年改正
・3選挙区の定数を6減・4選挙区の定数を4増4減
⇒平成7年~同19年の最大較差は5倍前後で推移

(4)平成24年改正
・4選挙区で定数を4増4減
⇒平成25年7月選挙の最大較差は4.77倍

(5)平成27年改正
・4県2合区を含む10増10減
⇒2.97倍へ。平成28年7月選挙の最大較差は3.08倍


3.最高裁判所判決

(1)平成6年判決
・平成4年選挙について、違憲の問題が生ずる程度の投票価値の著しい不平等状態が生じていた

(2)平成9年~12年判決
・平成6年改正後の2回の通常選挙については、上記の状態に至っていたとはいえない

(3)平成15~21年判決
・平成12年改正後の2回の通常選挙及び平成18年改正後の平成19年の通常選挙のいずれについても,上記の状態に至っていたか否かにつき明示的に判示することない

・平成18年判決:投票価値の平等の重要性を考慮すると投票価値の不平等の是正について国会における不断の努力が望まれる

・平成21年判決:最大較差の大幅な縮小を図るためには現行の選挙制度の仕組み自体の見直しが必要となる

⇒選挙区間の最大較差が5倍前後で常態化する中で、較差の状況について投票価値の平等の観点から実質的にはより厳格な評価がされた

(4)平成24年判決
・平成22年7月の通常選挙当時の定数配分規定が憲法に違反するに至っていたとはいえないものの、平成18年改正後は投票価値の大きな不平等がある状態の解消に向けた法改正が行われることのないことなどを総合考慮すると、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあった旨判示するとともに、都道府県を単位として各選挙区の定数を設定する現行の方式をしかるべき形で改めるなど、現行の選挙制度の仕組み自体の見直しを内容とする立法的措置を講じ、できるだけ速やかに違憲の問題が生ずる上記の不平等状態を解消する必要がある

(5)平成26年判決
・平成24年改正法による前記4増4減の措置は、なお5倍前後の水準が続いていたのであるから、違憲の問題が生ずる程度の投票価値の著しい不平等状態を解消するには足りないものであったといわざるを得ず、都道府県を単位として各選挙区の定数を設定する現行の方式をしかるべき形で改めるなどの具体的な改正案の検討と集約が着実に進められ、できるだけ速やかに、現行の選挙制度の仕組み自体の見直しを内容とする立法的措置によって上記の不平等状態が解消される必要がある

(6)今回の判決
・平成27年改正法は、その附則において、次回の通常選挙に向けて選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い必ず結論を得る旨を定めており、これによって,今後における投票価値の較差の更なる是正に向けての方向性と立法府の決意が示されるとともに、再び上記のような大きな較差を生じさせることのないよう配慮されているものということができる。

・平成27年改正は、都道府県を各選挙区の単位とする選挙制度の仕組みを改めて、長年にわたり選挙区間における大きな投票価値の不均衡が継続してきた状態から脱せしめるとともに,更なる較差の是正を指向するものと評価することができる。合区が一部にとどまり、多くの選挙区はなお都道府県を単位としたまま残されているとしてもそのことは上記の判断を左右するものではない。

・以上のような事情を総合すれば、本件選挙当時、平成27年改正後の本件定数配分規定の下での選挙区間における投票価値の不均衡は、違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態にあったものとはいえず、本件定数配分規定が憲法に違反するに至っていたということはできない。


[公職選挙法の一部を改正する法律](平成27年8月5日法律第60号)
http://houseikyoku.sangiin.go.jp/bill/outline27060.htm
附 則
(検討)
第七条 平成三十一年に行われる参議院議員の通常選挙に向けて、参議院の在り方を踏まえて、選挙区間における議員一人当たりの人口の較差の是正等を考慮しつつ選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い、必ず結論を得るものとする。


[日本国憲法](三権分立)
第41条(国会の地位・立法権)
国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。

第65条(行政権)
行政権は、内閣に属する。

第76条1項(司法権)
すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。

第81条
最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。


<感想>
 平成26年の最高裁判決に基づいて、平成27年改正が実施された。最高裁の違憲判断(司法権)に必ずしも拘束されるものではないが、国会(立法権)・内閣(行政権)に対する抑止力が働いたと言える。

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by tsuruichi1024 | 2017-09-30 08:00 | 最高裁判決 | Comments(0)


【 相続預金を当然分割するとはしない最高裁判決 】

 以下は、2016/12/19と2017/4/6の掲題に関する以下HPからの一部抜粋。
http://www.motolaw.gr.jp/column/k-motohashi/ 2017年04月11日、2017年01月11日のコラム)


[ 2016/12/19最高裁判決 ]
 従前の判例では、相続預金は可分債権とされ、各相続人に当然分割するとされていましたので、各相続人は、法定相続分に応じた払戻しを請求することができるとされていました。
 金融機関実務においても、原則としては、相続人全員の合意による払い戻しが求められているものの、相続人全員の合意が難しい場合には、相続分に応じた払い戻しを認めることも多かったように思われます。
 しかしながら、本決定により、預金は可分債権ではないとされたため、今後は遺産分割なしには、払い戻しを行うことは難しいと考えられます。

 平成27年(許)第11号 遺産分割審判に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件 平成28年12月19日 大法廷決定
 
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/354/086354_hanrei.pdf


[ 2017/4/6最高裁判決 ]
 信用金庫における定期預金、定期積み金についても、「共同相続された定期預金債権及び定期積金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはないものというべきである。」との判決が示されました。
 上記平成28年12月19日の決定では、定期預金と定期積金については判断がなされていませんでしたが、この判決により、定期預金や定期積金についても、普通預金などと同様に、当然分割とはならないことが、新たな判決によって確認されました。

 平成28年(受)第579号 預金返還等請求事件 平成29年4月6日 第一小法廷判決
 
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/670/086670_hanrei.pdf


【 感想 】
 相続預金(普通預金、定期預金等)は相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはない、とする最高裁判決が出されたため、金融機関でも今後は遺産分割(協議書)なしでの払い出しはしなくなるだろう。

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by tsuruichi1024 | 2017-06-05 08:00 | 最高裁判決 | Comments(0)


【 遺族補償年金の男女間の需給要件の違い 】

 2017/3/21、妻が一定の年齢に達していることは需給の要件とされていないが、夫は一定の年齢に達していることを需給の要件とすることは、合法であるとの最高裁判決が出た。以下は、判決文※からの大要の抜粋である。
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/612/086612_hanrei.pdf


<根拠>
・男女間における生産年齢人口に占める労働力人口の割合の違い
・平均的な賃金額の格差及び一般的な雇用形態の違い等からうかがえる妻の置かれている社会的状況

に鑑み、妻について一定の年齢に達していることを需給の要件としないことは、合理的な理由を欠くものということはできない。

⇒ 憲法14条1項※※に違反するということはできない。

※※「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」


<感想>
 最高裁判決の内容も時代の変遷とともに、変化して行くことが想定される。(本件は夫が逆差別されているような内容)

 将来、男女間における、平均的な賃金額の格差や一般的な雇用形態の違いが解消されれば、妻においても(夫と同様、)一定の年齢に達していることが需給の要件となるよう、変更されるに違いない。


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by tsuruichi1024 | 2017-03-25 08:00 | 最高裁判決 | Comments(0)


【 令状のないGPS捜査 】

 
2017/3/15、最高裁判所は、令状のないGPS捜査は憲法35条に違反とする判断を示した。(判決文:http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/600/086600_hanrei.pdf


<憲法35条>

何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条※の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。

 2 捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。

※33条
 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。


<内容>

 1.憲法35条の保障対象には、「住居、書類及び所持品」に限らずこれらに準ずる私的領域に「侵入」されることのない権利が含まれるものと解するのが相当であり、

 2.個人のプライバシーの侵害を可能とする機器をその所蔵品に密かに装着することによって、合理的に推認される個人の意思に反してその私的領域に侵入する捜査手法であるGPS捜査は、個人の意思を制圧して憲法の保障する重要な法的利益を侵害するものとして、令状がなければ行うことのできない処分と解すべきである、

 とされた。


 更に、3名の裁判官からは、「令状の発布が認められる余地があるとしても、そのためには、ごく限られた特別の事情の下での極めて慎重な判断が求められるといえよう。」との補足意見が付された。


<感想>

 最高裁の判決内容が、高裁と違って、至極まともなもので安心した。

 それにしても、何故、高裁は、令状もなく、警察は令状もなしで任意にGPS捜査ができると解釈したのだろうか。もし(一般の)個人のプライバシーより(組織的に違い)警察の捜査を優先する考えに基づいた下での解釈だとしたら恐ろしい。

 私たちの知らないところで、警察等から密かにプライバシーが侵害されないことを切に祈念する。


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by tsuruichi1024 | 2017-03-19 08:00 | 最高裁判決 | Comments(0)


グーグルに表示された犯罪履歴の削除申立て

 2017/1/31、最高裁は掲題削除申立てを棄却した。(全文:http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/482/086482_hanrei.pdf

<主文>
 本件抗告を棄却する


<比較衡量>
 以下1と2を比較衡量した結果、最高裁は「1<2」の判断を下した

1)プライベートに属する事実を公表されない法的利益
2)当該URL等情報を検索結果として提供する理由に関する諸事情


<逮捕理由の「児童買春」について>
 児童に対する性的搾取及び性的虐待との位置付け
 ⇒社会的に強い非難の対象とされ、罰則をもって禁止されている


<最高裁の判断内容>
 児童買春したとの被疑事実に基づき逮捕されたという本件事実は、今なお公共の利害に関する事項である

 本件事実を公表されない法的利益が優越されることが明らかであるとはいえない

 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する


<感想>
 公表された場合の法的利益が優越するような犯罪を犯すと、一生、犯罪履歴が公開され続ける畏れがあることを認識して、斯種犯罪を犯してはならないことを改めて肝に銘じておく必要がありそうだ


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by tsuruichi1024 | 2017-02-17 08:00 | 最高裁判決 | Comments(0)