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日本株、日銀が最大の買い手 今年4兆円 海外勢の売り吸収


 上記は、2016/12/25の日本経済新聞1面の表題。以下は記事の内容。

『 2016年、日本株の最大の買い手は日銀――。12月半ばまでの投資部門別売買動向を基に集計したところ、日銀の上場投資信託(ETF)購入額が4兆3千億円超と他部門を上回り最大になることが確実になった。昨年に比べ4割増え、外国人投資家の売りを吸収した。

 年初からの日銀発表東証集計の投資部門別売買動向を基に比較した。16年1月から12月第2週(12~16日)までの累計売買では、外国人が3兆5千億円強を売り越した半面、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)などの売買を含む信託銀行が約3兆5千億円を買い越した。一方、日銀は22日までにETF4兆3千億円購入しており、信託銀を上回り「今年最大の買い手となる」(みずほ証券の菊地正俊氏)。 』(太字は筆者)


  この記事の内容は正確か?

1.出所が違う(東証の集計値と日銀の発表数値)数値同士を比較している

2.比較対象が違う物同士(投資部門別の株式売買額と日銀のETFの購入額)を比較している


 記事を読むと、海外勢の売りを日銀がカバーしているように見える。

 東証集計は「投資部門別 株式売買状況 東証第一部 [金額]の売り買いネット金額」(http://www.jpx.co.jp/markets/statistics-equities/investor-type/00-01.html)で、日銀発表は「ETFの買入結果」(http://www3.boj.or.jp/market/jp/menu_etf.htm)。

 日経1面には、同じ表の中に計測ベースの違う上記数値が同じ土俵で比較されてもいるが、日銀のETFの買入では外国人投資家の東証1部の株式の売りを直接吸収することはできないため、「吸収した」と断言するのは言い過ぎか。

 また、日銀が信託銀行を上回り「今年最大の買い手となる」とあるが、信託銀行の数値も東証1部の売り買いネット金額であり、日銀のETF買入額と比較するのはやや強引過ぎないか。


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by tsuruichi1024 | 2016-12-31 08:00 | 日銀 | Comments(0)



安倍首相の真珠湾往訪の意義


 2016/12/27の「ザ・ボイス そこまで言うか!Podcast」に、経済学者の高橋洋一さんがゲストで出演され、大要以下のような内容をご指摘されていた。

 意義 : 戦争責任・謝罪なし、ともに追悼するという「*ドレスデン(ヨーロッパ)型和解」
      (戦後レジームからの脱却) 
 
 順番が大事:
  2016年5月 オバマ大統領、伊勢志摩サミット後に広島訪問
     12月 プーチン大統領、山口を訪問
        安倍首相、ハワイ・真珠湾を訪問

  ⇒ **非民主国の中国を巡る、米国・ロシア(・インドも含めて)の外交的バランスを重視した戦略

* アメリカは第2次大戦中のドレスデン爆撃についてドイツに謝罪した事実はない。ドイツはアメリカに謝罪は求めていない。アメリカとドイツの間では、ドレスデンの問題は、謝罪の問題ではなく、和解の問題として考えられている。

 アジアでは、中国と韓国のように、日本に対して戦争責任を主張し、まず謝罪せよとの、古いタイプの言い方が今でもまかり通っている。それが、今(2016)年は、日本だけがいち早くヨーロッパ型の和解(戦争責任・謝罪なしで、ともに追悼)を取り入れた記念すべき年になるだろう。(出所:http://www.j-cast.com/2016/12/08285632.html?p=all

** 詳細は『中国の海洋進出阻止のために描くべき、「日米露印包囲網」という戦略』ご参照(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50576


 高橋洋一さんは、2007年、官邸参事官として安倍第1次政権で働いていたときに、ドレスデン型和解を安倍首相にレクチャーされていたそうだ。

 これまでのアジア型からヨーロッパ型の和解への変化。

 第1次政権からの9年越しの真珠湾訪問は、意義深いものになりそうだ。


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by tsuruichi1024 | 2016-12-30 08:00 | Comments(0)


海賊と呼ばれた男



 先日、映画「海賊と呼ばれた男」を見た。

 以前から、百田尚樹著の同名小説や出光佐三氏(以降、「店主」)関連の本は何冊か読んでいた。

 以来、ガソリンは出光で入れることにしている。



「出光佐三 不景気、大いに結構」

 文藝春秋 創刊90周年記念(2013年1月)で、元出光興産会長の天坊昭彦氏が、「出光佐三 不景気、大いに結構」と題して、以下内容を語っている。


『 店主は、欧米の石油メジャーの独占的な支配に反発し、「メジャー何するものぞ」という反骨精神を強く持っていました。その象徴といえるのが、百田さんの小説の題材にもなった昭和28年の「日章丸事件」です。

 発端は大産油国のイランが、イギリスに支配されていた石油を国有化すると宣言したこと。これを認めないイギリスは、「イランから石油を買う国のタンカーは拿捕する」と脅します。店主はこれに屈せず、出光最大のタンカー「日章丸二世」を極秘に派遣したのです。船はイギリス海軍の監視をかいくぐって、ホルムズ海峡を往復。ガソリンと軽油を運ぶのに成功したのです。ところがイギリス側は積み荷の所有権を主張して提訴してきました。店主は東京地裁の法廷にたって、

「この問題は国際紛争を起こしておりますが、私としては日本国民の一人として、俯仰天地に愧じない行動をもって終始することを、裁判長にお誓いいたします」

 結果は全面勝訴となり、敗戦後の占領から脱したばかりの日本人に、大きな勇気を与えたのでした。

「事業は金儲けのためにやるのではない、人の役に立つためにやるんだ。そして仕事を通じて人を育てるのが会社の使命なんだ」というのが店主の変わらぬ信念でした。

 また、「不景気大いに結構。天下大乱いいじゃないですか」

 とも言っています。

「ぼくは楽観主義です。人間ちゅうものは苦労しなけりゃだめ。苦労すればするほど立派になる。人間尊重のぼくに言わせりゃ、大きく行き詰まれば、大きく道が開けるということです」

 当意即妙なやり取りも得意でした。88歳で白内障の手術をしたあと、岸信介元総理がお見舞いにいらっしゃたそうです。「どこまで見えるのか」と尋ねられ、「君の腹の黒いのがよく見えるよ」と答えたとか(笑)。

 また店主は明治人らしく、皇室を厚く敬っていました。昭和56年に95歳で亡くなった際、天皇陛下が悼んで御歌を詠んで下さいました。

「国のため ひとよつらぬき尽くしたる きみまた去りぬ さびしと思ふ」

 店主にとって何にも代えがたい喜びだったと思います。 』(太字は筆者)


 「事業は金儲けのためにやるのではない、人の役に立つためにやるんだ。そして仕事を通じて人を育てるのが会社の使命なんだ」という店主

 また、天皇陛下からも御歌を頂いた、皇室を厚く敬っていた店主だった。


九十歳でもゴルフはできる

 「男の生き方」40選(城山三郎編、文春文庫)で、店主は城山三郎と対話をしている。

『 九十歳でもゴルフはできる  出光佐三

 それから大変だったのは戦後だよ。終戦後しばらく、いろんな事情で出光は石油業に復帰を許されなかった。そこへもってきて、兵隊に行っとったもんや、海外で石油の配給やっておったもんが、千人ほど帰って来た。

 千人帰って来た時に、重役会で、「あれを一応クビ切って再建を図りましょう」いうことをある重役がいうた。そん時にゃ、ぼくは怒鳴りつけたね、「バカーッ」ちゅうた。

「貴様みたいなやつはここにくなッ」ちゅうてね、怒鳴りつけた。そして千人全部、一人もクビ切らんでぼくはひっかかえました。家族主義の情愛と同時に、出光の資本はじゃない、出光の資本はだ、苦労してきた人間資本を棄ててどうなるんか、おれは抱えるちゅうてね。周りの経営者からは、バカと言われましたよ。

 抱えたのはいいけど、しかし、金もないしやる仕事もない。その時にね、旧海軍の、貯蔵地下タンクに相当量の泥廃油が放置されておる、あれを集油してくれんかという話が来た。徳山、呉、佐世保なんかの地下タンクの底に泥みたいになって、石油が少し残っとるわけなんだ。戦争末期、いよいよなくなった時に海軍の方であれを上げたらちゅうことでやりかけたけど、悪性のガスがたまったりしてて、さすがに手がつけられなかったほどのものなんだ。誰もやり手がない。実を言うと、出光にこの仕事をやれせて、大欠損を与えてつぶすというのが目的だったらしい。

 それなら意地でもやってやると言って引き受けた。もう全員が全力投球してね、ふんどし一つでタンクの底にもぐりこんで、まっ黒になって油を汲み出しながら、とうとうやり遂げた。それを見ていた正金銀行の門司の支店長が、これはたいしたもんだというて出光に金を貸してくれるようになった。

 今でも、だから、何か苦しいことがあると社員の方がぼくに言うですよ。「もう一度、タンク底にもぐりましょう」って。

 馘首がない、定年制がない、組合がない、出勤簿がない、罰則がない、給料を発表しない、残業手当を社員が受け取らない、世間じゃ、“出光の七不思議”というとるそうですね(笑)。バカみたいな会社だと(笑)。もう一つつけ加えると出光には金もない(笑)。あるのは借金ばかり(笑)。

 出光は石油業やってるんじゃない、石油業を利用して、人間さえしっかりしておれば、こんなに立派にいくぞという人間のあり方を社会に知らすということが目的なんだ、出光の仕事は人間を作るということなんだ、金儲けしちゃいかん、社員に、いつもそう言っているんです。 』(太字は筆者)


出光の資本はじゃない、出光の資本はだ、苦労してきた人間資本を棄ててどうなるんか、おれは抱えるちゅうてね」

 店主のこれらの言葉、現在の、会社と店主一族の「昭和シェル石油」との統合に関する対立。
 対立の構図を単純化すると・・・

 「昭和シェル石油」との統合を目論む会社
 ・・・金儲けのため(の統合)

 店主一族
 ・・・「メジャー何するものぞ」という反骨精神を強く持ちつつ(メジャーとは距離を置いた独立独歩の)仕事を通じた人を育てる風土を守るため(の統合反対)


 店主もメジャー(ロイヤル・ダッチ・シェル傘下のシェル・ペトリアム)が筆頭株主だった会社との統合は到底受け入れられなかっただろう。

 ここに昭和の良き会社がまたひとつ無くなりそうだが、社員一人ひとりが店主の心持ちは忘れることのないよう、祈念している。


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by tsuruichi1024 | 2016-12-29 08:00 | 出光佐三 | Comments(0)


GDPと三面等価の原則

 三面等価の原則とは、生産面から見ても、所得(分配)面から見ても、支出面から見ても、国内総生産(GDP)は同じ値になる、マクロ経済学上の原則のこと。

  生産=所得=支出

 GDPがどのようにして使われるのかという「支出面から見たGDP」は、民間消費(C)、総固定資本形成(I)、政府消費(G)、財・サービスの輸出入(X-M)の合計となる。

  GDP(Y)=(C+I)(民需)+G(公需)+(X-M)(外需)


2016年7-9月期GDP速報

 2016/12/8、内閣府より2016年7-9月期(2次速報値)が発表(http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2016/qe163_2/pdf/qepoint1632.pdf)された。[  ]=1次速報値

 GDP成長率 
  実質 0.3%(年率1.3%)[0.5%(年率2.2%)]↓  
  名目 0.1%(年率0.5%)[0.2%(年率0.8%)]↓

 需要項目別(数値は実質ベース)
  民間最終消費支出 +0.3%[+0.1%]↑
  民間住宅     +2.6%[+2.3%]↑
  民間企業設備   ▲0.4%[+0.0%]↓
  民間在庫変動   ▲0.3%[▲0.1%]↓

  公的需要     +0.3%[+0.4%]↓
  公的固定資本形成 +0.1%[▲0.7%]↑
  公的在庫変動   ▲0.0%[▲0.0%]→

  輸出(財貨・サービス)+1.6%[+2.0%]↓
  輸出( 同 )   ▲0.4%[▲0.6%]↑

   
支出面から見たGDP

 上記発表の統計表数値(http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2016/qe163_2/gdemenuja.html、名目暦年(CSV形式:7KB))を民需と公需と外需に分解してみる。

名目GDP532.2兆円
 民間消費 299.9兆円
 住宅投資  15.9兆円  民需 399.4兆円(75.0%)
 設備投資  81.2兆円
 在庫投資  2.4兆円

 政府消費 106.0兆円
 政府投資  26.7兆円  公需 132.8兆円(24.9%)
 政府在庫  17.6兆円

 輸出    91.7兆円   外需  0.0兆円(0.0%)
 -輸入   91.6兆円

 民需が全体の75%を占めるため、民需が伸びればGDPも伸びることになる。


日銀短観

 2016/12/14、日銀短観が発表(http://www.boj.or.jp/statistics/tk/yoshi/tk1612.htm/)された。

 日銀短観の業況判断指数(DI)とは、景況感が「良い」と答えた企業から「悪い」と答えた企業の割合を差し引いた値。今回の回答期間は11/14〜12/13。

 大企業製造業  DI+10(9月+ 6)↑・・・改善は2015/6以来、1年半ぶり
 大企業非製造業 DI+18(9月+18)→

 中小企業製造業 DI+1(9月▲3)↑
 同 非製造業   DI+2( 同 +1)↑

 大企業製造業の2016年度下期の為替の前提が103.36円/ドルだったことを考えると(12/22時点117.50円/ドル)、景況判断は更に良くなることが想定される。

 短観からは、景況感の向上⇒今後、売上増⇒民間の設備投資増が期待される。

 民間の設備投資が増加して、「先行きに明るさ」が見えてくれば、可処分所得増⇒個人消費増(GDPの最大寄与項目)を通じて、結果としてGDP(目指せ、600兆円!)も増加して行くに違いない。


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by tsuruichi1024 | 2016-12-28 08:00 | GDP | Comments(0)


国土交通省の10月の建築着工統計調査報告(修正)


 2016/12/21、国交省より平成28年10月分の建築着工統計調査報告(修正)が発表(http://www.mlit.go.jp/common/001156785.pdf)された。(修正前:http://www.mlit.go.jp/common/001153771.pdf


 住宅着工戸数 87,239戸 前年同月比4ヶ月連続の増加(前年同月比+13.1%

 (持家) 前年同月比9か月連続の増加(同+4.9%

 (貸家) 前年同月比12か月連続の増加(同+22.0%)・・・「2ケタ増の月も多い。相続税の節税資産運用目的のアパート建設が好調」(日経電子版2016/12/19 22:18の記事より)

 (分譲住宅) 前年同月比2か月連続の増加(同+9.3%


このままアパート建設が増え続けて大丈夫?

 施工業者筋は、相続税/所得税の節税対策や資産運用として、地主のみならず、土地を保有しないサラリーマンにまで、(土地付)アパート建設を煽っているようにも見える。

 また、同様に、マンション投資(新築、中古を問わず)の情報も見ない日はない。

 しかし、少子高齢化は自明で、今後、アパートやマンションへの入居需要が増えていくことは想定し難い。


金融庁の検査

 日経電子版(2016/12/14 0:36)によれば、金融庁アパートローンの過熱を警戒し、年明けにも地銀105行に検査を実施すると言う。

 1件ごとに、節税に繋がっているか、収支が黒字かなどを点検するようだ。

 今後の需給状況の見通し等を含めて、よくよく検討した上で、投資することをお勧めしたい。

 もうはまだなり まだはもうなり・・・
 (http://www.jsda.or.jp/manabu/proverb/contents/proverb21.html

 何事も腹8分目が良さそうだ。


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by tsuruichi1024 | 2016-12-27 08:00 | 建築着工統計 | Comments(0)


資金循環統計

 2016/12/19、日銀から2016年第3四半期(7〜9月)の資金循環(速報)が発表(https://www.boj.or.jp/statistics/sj/sjexp.pdf)された。


部門別の金融資産・負債残高(2016年9月末、P1)
(括弧内:対前年比、シート番号:https://www.boj.or.jp/statistics/sj/sj.htm/の「資金循環統計(速報)(2016年第3四半期) [ZIP 103KB]」のExcel)

 家計が保有する金融資産残高 1752兆円(+0.6%、シート20)
 民間企業が保有する現金・預金 246兆円(+8.5%、シート19)・・・2005/3以降で最高
 
 国債保有残高
  日本銀行 413兆円(+31.3%、シート21、保有比率37.9%)
  国内銀行 219兆円(▲14.7%、シート23、同20.0%)
  海外勢   112兆円(+11.4%、シート20、同10.3%)

 金融機関の貸出 788兆円(+2.8%、シート19)・・・1997年以降で最高
 家計向け貸出   275兆円(+2.9%、シート20)・・・過去最高

(対前年比数値、コメントの出所:「日経電子版2016/12/19 22:18、同15:42、同10:02」)



GDP600兆円のために何が必要か

 2016/12/8、内閣府から2015年度名目国内総生産(GDP)の確報値532.2兆円が発表(http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kakuhou/gaiyou/pdf/point20161208_2.pdf)された。

 GDP600兆円達成のために、何が必要か。

 2005/3以降で最高となった民間企業現預金246兆円を使わせることが最も効果的であるように思われる。

 限界消費性向が仮に0.5であれば、家計/投資に35兆円回れば、目標GDP600兆円(532.2+35/(1-0.5))が達成できる。

 政府は(スポットの)賞与や投資を促す施策を考えるべきであろう。


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by tsuruichi1024 | 2016-12-26 08:00 | 資金循環統計 | Comments(0)


USJの森岡毅執行役員が退任


 2016/12/16、USJの立役者、森岡毅執行役員の退任(2017/1)が発表された。
 退任の背景に、何があったのか。


会社の利害と個人の利害の不一致

 2015年、IPOの計画もあったUSJの大株主がゴールドマン・サックスからコムキャストに変わる。
 大株主の変更により、会社の利害と個人の利害が一致しなくなったことが森岡氏退任の背景と見る。


 以下は、日経電子版記事(2016/12/17 0:44)より。

『 なぜ会社を去るのか。会見で「これだけはやりたかった」と吐露したのが沖縄進出だ。「アジアで最も集客力のあるエンターテインメント産業をつくる」というのが夢だった。その足がかりにしようとしたのが約600億円沖縄に「第2パーク」をつくる計画だ。
 だが事態は急変する。15年米コムキャストの傘下に入り、今年5月計画を撤回した。シンガポールに続き北京新パークを計画するコムキャストにとって沖縄は戦略的な地域ではなかった。

 「刺激がなくなるとジャングルに戻りたくなる」。森岡氏は腕を振るう場が狭まったと判断したのだろう。コムキャストは大阪に集中して収益を上げる方針。500億円超を投じ、任天堂と新エリアを計画する。まだ用地を確保できるが、いずれ敷地に限界がくる。

 企画や営業を含め6部門を統括した森岡氏。行き先は「決まっていない。ゆっくり考える」。USJが成長軌道を持続するには森岡流を引き継ぎ、斬新なアイデアを形にする人材の育成が欠かせない。 』(太字は筆者)


 以下は、日経電子版の記事(2016/12/17 2:19より)。

『 ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ、大阪市)を運営するユー・エス・ジェイは16日、森岡毅執行役員(44)が2017年1月末で退任すると発表した。集客の総責任者として映画「ハリー・ポッター」エリアの開業などを主導。10年の入社当時730万人だった来場者をほぼ倍増させた森岡氏は記者会見で「USJはよみがえった」と強調した。ただ沖縄進出撤回には未練をのぞかせた。会見の主な質疑応答は以下の通り。

 ――森岡氏の退任でUSJの方針は変わるか。

 「はUSJに需要予測のノウハウと全社を消費者目線で連動させるシステム、個人のマーケティングスキルの強化を仕組みとして取り入れた。(前社長の)グレン・ガンペルが去り、新しい時代が来る。私の仕事は部下が、意思決定はジャン・ルイ・ボニエ最高経営責任者(CEO)が引き継ぐ。会社は環境に合わせて適時変わるが、大成功を支えている大きな柱は変わらない」

 ――6年半の在任期間でやり残したことは。

 「全力を尽くしたので悔いは1ミリもない。唯一沖縄進出はUSJの戦略としてやりたかった。今後マーケティング導入が遅れている業界や会社、自分が加わって力を生かせる場所を探す。同業他社には行かない」 』(太字は筆者)



 森岡氏は、「自然状態としての会社組織は、会社の利害と個人や部門の利害は必ずしも一致しないので、消費者視点で会社を統一させて機能させることは容易ではない。」と以下著作で語っていた。


「成功を引き寄せるマーケティング入門 USJを劇的に変えた、たった1つの考え方」(森岡毅著、角川書店)より


『 第1章 USJの成功の秘密はマーケティングにあり

 まずは、マーケティングの果たす役割について大きく理解していきましょう。マーケティングが会社のなかでどのような働きをするのか、USJというテーマパークの具体例を通して多くの読者にざっくりとしたイメージを持ってもらいたいと思います。


  V字回復の着眼点とマーケティングの役割

 会社からマーケティングに期待される第一の仕事は、トップライン売上金額)を大きく伸ばすことです。

 マーケティングは会社の「頭脳」でもありますが、それと同時に多くの部署を動かす会社の「心臓」の役割も担うのです。

 会社の進むべき方向を見極める頭脳としての存在、企業の軍師ともいうべき「マーケター」の最初にすべき最重要な役割は「どう戦うか」の前に「どこで戦うか」を正しく見極めること。そして正しい方向へ会社を無理やりにでも引っ張っていくことだと、私は考えています。

 ビジネスを劇的に好転させるために衝くべき焦点(=着眼点)が、わかるというよりも、感覚的には見えているという状態に近い。もちろん眼球では見ていませんが、意識の中でその「衝くべき焦点」が、まるで光を放つように明確に見えるようになります。

(1)ターゲット客層の幅 : USJが相手にできる客層の幅が狭すぎることが最大の問題である。「映画ファンだけのパーク」という作り手側の無意味なこだわりのせいで、ただでさえ関東の3分の1しかない関西市場をさらに小さく使い、自らの首を締めている。

(2)TVCMの質 : TVCMというプロモーションの最大の柱に大きな改善の余地がある。当時のUSJのCMの品質はTDRと比べて悪くはないが、一級品ではない。消費者がUSJに来場する本質的な理由を強く捉えられていないところに集客を伸ばす余地が大いにある。中長期にわたってTVCMなど全てのプロモーション活動によりブランドイメージを強固にしていく仕掛け(ブランド・キャンペーン)が必要。

(3)チケット価格の値上げ : 大人5800円(当時)というチケット価格はあまりに低すぎる。消費者の所得、他の物価との比較、エンターテイメントと支出の中でのテーマパークのシェア、それらを米国や欧州などの他の先進国と比較すると、日本のテーマパークは世界標準の約半分で安売りされていることは明白。


 プライシングで大切なのは、値段を最終的に決めているのは市場であり、消費者であるという認識です。「値上げ」には大きなリスクが伴います。

 値下げして個数を伸ばすことは誰にでもできるのですが、一流のマーケターに要求される仕事は、値上げしながら個数も伸ばすことです。単価と個数の両方を上げて、会社を往復ビンタで儲けさせることです。

 先にブランド価値を顕著に高めておいて、価格弾力性をできるだけ小さくしておくことです。

 マーケティングの力によって企業は劇的に変わります


  変えたのは1つだけ

 それは「消費者視点Consumer Driven)」という価値観仕組みUSJを変えたことです。USJが消費者視点の会社に変わったということが、V字回復の最大の原動力だと思います。

 つまり「消費者の方を向いて消費者のために働け」という意味です。

 「ゲスト本当に喜ぶもの」と「ゲストが喜ぶだろうと作る側が思っているもの」は必ずしも一致しないのです。

 なぜならば、作る側は自然状態では消費者感覚から最も遠ざかる運命にあるからです。

 プロとしての技術を業界で毎日毎日見ていると、どんどん目が慣れてしまって、彼ら自身の「感動の水準」が一般消費者のそれとはどんどん離れて離いきます。多くの消費者にとってわかりやすくて面白いものが、彼らには刺激や品質が足りないものに見えたりするのです。そしていつしか無意識のうちに自分が良いものと思うもの(=玄人好みのもの)を作るようになっていくのです。

 エンターテイメントの傑作は彼らクリエイティブな人間達の創造性抜きには決して生まれません。

 マーケッター消費者理解の専門家だからです。

 USJ消費者視点を大切にして、作ったものを売る会社から、売れるものを作る会社に変わりました。

 マーケターの仕事は、会社のお金の使い道や従業員達のあらゆる努力を、消費者にとって意味のある価値に繋がるようにシフトさせることです。


  なぜ「消費者視点」は簡単にできないのか?

 会社というたくさんの人が集まっている集団の中では、会社の利害と個人の利害が必ずしも一致しないからです。

 部門間や個人間の利害やしがらみをぶった切ってでも、消費者価値としてのベストを押し通す強力な意思決定の仕組みが必要になります。

 「落としどころ」は、ほとんどの場合において消費者最適ではありません。

 自分起点で周囲を説得し倒して、人を動かすことが重要。自分が信じる正しい方向に、自分以外の全員を説得して巻き込んでいく気概が必要になります。大変ですけど、やりがいも凄まじいものがあります。マーケターとはそういう仕事です。


 第1章のまとめ

  会社組織におけるマーケティングの役割


1.会社がマーケティングに期待するのは主に「トップライン売上)」を伸ばすこと。

2.マーケティングは売上を伸ばすための会社の「頭脳」であり「心臓」である。

3.ビジネスの結果を左右する衝くべき焦点を「ビジネス・ドライバー」という。

4.マーケティングの最初にすべき最重要な仕事は、「どう戦うか」の前に「どこで戦うか」を正しく見極めること ⇒ 会社の「頭脳」

5.消費者視点の会社Consumer Driven Company)になれば、自ブランドの価値を上げて業績を好転させることができる。

6.自然状態としての会社組織は、会社の利害と個人や部門の利害は必ずしも一致しないので、消費者視点で会社を統一させて機能させることは容易ではない。

7.マーケティング消費者理解の専門家として、消費者価値を最大化させる最善策を部門や個人の利害を超越して主張し、実現へ向けて牽引しなければならない ⇒ 会社の「心臓」。 』(太字、下線は筆者)


 USJ消費者視点の会社Consumer Driven Company)に変えた、真のマーケターである森岡氏

 その森岡氏をもってしても、今回は「自分が信じる正しい方向に、自分以外の全員を説得して巻き込んでいく」ことができなかったようだ。

 次は、どの会社を新しく再生されるのか、今から目が離せない。


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by tsuruichi1024 | 2016-12-25 08:00 | マーケティング | Comments(0)


「企業価値経営 コーポレート・ファイナンスの4つの原則」
(マッキンゼー・アンド・カンパニー、ダイヤモンド社)より 



 マッキンゼーの人たちが考える、価値創造に貢献する戦略立案の方法について学んでみる。



『 第17章 価値創造経営


  戦略立案と予算策定


 戦略立案が価値創造に貢献するように改善する方法は、いくつも考えられる。

 第1に、戦略立案と予算策定の間にあるしがらみを断つことだ。戦略計画は、それが見せかけの3~5年の業績計画となってしまわないために、予算策定とは別の時間軸のもとで実施されるべきである。

 第2に、事業部の戦略立案は、詳細な業績予測から離れて長期的な価値創造ドライバーを重視し、事業部が直面している問題や機会についての議論に集中すべきである。詳細な業績予測の項目を50行も連ねるのではなく、各事業部には、問題点、機会、必要な投資を整理するのに役立つような、10行の項目からなる財務のシナリオを3つ準備させるべきかもしれない。

 企業はまた、事業単位の戦略立案とは別に、独立した企業全体の戦略プロセスを策定するべきである。この企業戦略は、優れたオーナー、成長のプラットフォーム、資源配分を説明するものであなければならない。

 事業戦略企業戦略の両方とも、現状を大きく変革するための立案でなければならない。たとえば、事業からの撤退将来性のある成長機会への大幅な支出の増加、自社の商品開発や販売における資本の集約性を減らすための大胆な方策の実施、などである。


 よりよいアプローチは、企業本部が各事業と協働し、個々の事業部にとっての対等な目標と予算を算出し、それらの合計を検証する、というものである。全事業部の合計が本部の期待にそぐわない場合もあるかもしれないが、それで構わない。企業がこのような準備を行っていれば、機械的な全社一律のコスト削減ではなく、相対的な価値創造の潜在能力に基づいて、どの事業部のコストを削減すべきかを判断できる。さらなる利点として、企業はこのプロセスを通じて、全事業部のすべての機会を全額まかなう予算はないことを理解するだろう。その結果、自社がある事業部のベスト・オーナーかどうか、慎重に議論する機会が得られるだろう。


  取締役会

 我々の同僚は、以下のように述べている。「業績管理に対する企業文化の特性と強度こそが、おそらく2つの環境の最も大きな違いだろう。あるインタビュー対象者によれば、プライベート・エクイティの取締役会には『容赦なきまでの価値創造への希求』があった。それに対して、上場企業の取締役会は、細部にあまり関与しない、と表現された。上場企業の取締役会は、本質的な価値創造の追求に焦点を当てる度合いがはるか少なく、四半期の利益目標の達成をはるかに重視する。彼らは予算管理や短期な会計上の利益を重視しており、投資家を驚かせることを避けようとしている。」


 取締役会は、個々の事業単位の業績、戦略、機会についてより理解を深める方法を探すべきである。価値創造は事業部レベルで起こるのであって、全社レベルで起こるのではないため、取締役会はこの事業部レベルでの洞察や議論を必要とする。


  共訳者あとがき

 本書のなかで一貫して語られているメッセージは、「企業の経営者はどのような視点を持ち、どのような判断基準に基づき、どのように行動すれば、企業価値を高めることにつながるか」ということである。

 本書の主たる読者層は、企業価値を実際に現場で行う実務家というよりは、むしろその評価結果を解釈し、経営判断を求められる企業の経営幹部を想定しているように思われる。本書における著者たちの視点は、常に経営のトップにあり、そのメッセージは経営者に直接向けられている。

 2012年8月 鈴木一功 』


 現状を大きく変革して長期的な価値を創造するために、(1)事業単位と、(2)(事業単位とは独立した)企業全体の、大胆な戦略立案の策定が必要であるという。

 現状の延長線上で考えるだけでは、企業価値を高めることにはなり得ないということだと思う。


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by tsuruichi1024 | 2016-12-24 08:00 | コーポレート・ファイナンス | Comments(0)


「企業価値経営 コーポレート・ファイナンスの4つの原則」
(マッキンゼー・アンド・カンパニー、ダイヤモンド社)より 


 マッキンゼーの人たちが考える、事業ポートフォリオをどうすべきで、経営者は何をすべきかを学びたい。


『 第12章 事業ポートフォリオ


  事業ポートフォリオへの追加


 経営者にとって最も難しい仕事の1つは、事業ポートフォリオに新たな事業を加える際に、自ら新規事業を立ち上げるか買収によって追加するかを見極めることだ。ほんとの企業のこれまでの実績は芳しくなく、フォーチュン500の企業のうち50%10年たつとリストから消えていく。一般的に、企業がフォーチュン500の企業規模に達するのは、カギとなる事業製品の力によるものであるが、それらが成熟すると、新たな成長の源泉を見出すことができない(企業規模が大きいと、次なる成長の源泉も相応の規模でなければインパクトを得られず、これが問題をより深刻なものにしている)。

 事業創造のパイプラインを構築し、管理することは、成長維持のために必要となる中心的な課題であるとしている。そのようなパイプラインを維持する1つの方法は、以下に示す発展の3つのタイプに分けて、企業が明確な意思をもって成長機会を管理することである。

●タイプ1 : 現在企業の利益とキャッシュフローの大部分を創出している事業であり、ほどほどに成長している。

●タイプ2 : ほどほどの売上と利益を生み出している将来有望な事業だが、大きな利益とキャッシュフローを会社にもたらすには、少なくとも4~5年必要である。

●タイプ3 : 研究プロジェクト、試験的な市場調査、提携マイノリティ出資、進行中の合意覚書など、成功すれば10年後もしくはそれ以降に業績への大きな貢献が見込めるものである。


  事業ポートフォリオの多角化

 他の事業と「連携が可能」な事業を所有するだけでは、十分ではない。論理的にみえる戦略がうまくいっていない場合、「実際にどう連携させるか」を解明しなければならない。過去の失敗例の数々をみれば、銀行と保険会社を統合して(論理上は可能な)クロスセルを実現させようという試みがいかに難しいかがわかる。小売のコンセプトを国境を越えて適用しようという試みも、同様である。


 第13章 M&Aによる価値創造

  実証結果


 1.自社の事業運営に優れた買い手企業が、より成功を収める。

 2.買収プレミアムは低いほうがよい。

 3.唯一の買い手であることが重要である。


  M&Aによる価値創造のタイプ

 1.売り手企業の業績を改善する。
 2.統合によって業界から過剰な生産能力を取り除く。
 3.売り手企業もしくは買い手企業の商品市場へのアクセスを増大させる。
 4.経営スキルや技術を、自社単独で構築するよりも速く、かつ低いコストで獲得する。
 5.将来有望な企業を早期に見つけ、その事業を支援し発展させる。


 第15章 有利子負債・資本構成

  配当と自社株買い


 1980年代の初頭まで自社株買いは、株主還元総額の10%未満であった。現在では、株主還元の約50~60%が自社株買いによるものである。なぜ配当から自社株買いにシフトしたのだろうか。これは主に柔軟性が理由である。特に米国においては、企業はよほど厳しい状況にならない限り、配当を削減しないよう投資家から期待されている。2004~2008年にかけて、売上規模5億ドル以上の米国上場企業のうち、配当を削減したのはわずか5%のみであり、それらの企業はほぼすべて厳しい財務上の危機に直面していた。企業は維持する自信のない配当水準を設定することを嫌い、それよりも自社株買い戻しを選ぶのである。

 
 株主に余剰キャッシュフローを還元することは、基本的にはよいことである。しかし、それ自体は価値を創造しない。むしろ、それによって収益率の低いプロジェクトへの投資を回避できるというメリットを意識すべきである。

 有利子負債・資本構成をうまく管理できなければ、財務危機と価値毀損につながりかねない。しかし、レバレッジがすでに妥当な水準にある企業では、有利子負債・資本構成の最適化によって価値が創造される可能性は限定的であり、その影響はROICや成長率の改善がもたらすものに比べると小さい。経営者は、最適な有利子負債・資本構成を求めて微調整するよりも、自社が戦略を遂行するために十分な財務的柔軟性をもつように心がけるべきである。 


 第16章 IR活動

  本来価値への投資家とのコミュニケーション


 本来価値への投資家は洗練されており、事業を理解するために多大な労力を費やす。彼らは業績の不透明、経営者による業績の率直な評価、企業の目標や戦略に関する明確な方向性を求めている。株価を決定づける彼らの役割を考えれば、経営者は彼らの要求に応えて、概要を示すだけではなく綿密なコミュニケーションを行うべきである。


 投資家がさらに知りたいのは、戦略的意思決定が失敗した場合に、経営者が何を学習したかである。特に本来価値への投資家は、事業ではリスクをとることも必要であり、必ずしもすべてが成功するものではないということをわかっている。これらの投資家は率直さを重視しており、事前に十分な情報を得て経営者の判断に信頼をおいていれば、企業が軌道修正を行っていく間も指示してくれるだろう。


 自社の有する能力、機会、脅威については投資家より多くの情報をもっているのは、経営者自身である。経営者は、自らの戦略的意思決定について自信をもち、投資家にそれを伝えなければならない。経営者はすべての投資家を喜ばせることはできず、長期的な価値創造のために最善となることを実行しなければならない。』(太字は筆者)



 フォーチュン500の企業のうち50%10年たつとリストから消えていくという。

 その理由は、カギとなる事業製品成熟すると、新たな成長の源泉を見出すことができないこと。

 結果が出るまでに少なくとも4~5年かかるであろう将来有望な事業を、企業が明確な意思をもって、パイプラインとして成長させることができるか。

 また、経営者は、財務的柔軟性を持って自社株買いを行ったり、本来価値への投資家との綿密なコミュニケーションを行っていくことができるか。

 これらができれば、10年たってもフォーチュン500に残れるに違いない。


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by tsuruichi1024 | 2016-12-23 08:00 | コーポレート・ファイナンス | Comments(0)



「企業価値経営 コーポレート・ファイナンスの4つの原則」
(マッキンゼー・アンド・カンパニー、ダイヤモンド社)より 


 マッキンゼーの人たちが考える、どのタイプの投資家を重視すべきかを理解した上で、日本にどんな影響を及ぼしてきたのかを考えてみたい。


『 第6章 株式市場とは何か


  投資家を適切に分類・理解する


 本来価値への投資家(intrinsic investor)


 厳格なデューデリジェンス(通常1ヵ月以上かかる)を行って、投資先企業に長期的な価値を生み出す能力が内在していることを確認した後に投資を行う。デューデリジェンスは、企業の財務状況経営戦略についてだけではなく、経営陣の、リーダー・戦略家としての力量をも対象としている。こうした投資家は全米の資産の20%を保有しており、米国市場における取引量の10%を占めていると推定される。

 本来価値への投資家に分類される投資信託の例として、レッグ・メイソン・バリュー・ファンドがある。このファンドが常時ポートフォリオに組み込む銘柄は50社にみたず、10%未満の回転率しかない。ヘッジファンドの世界においては、リー・アインスリーが運営するマーベリック・キャピタルが本来価値への投資家の好例である。マーベリックが1人の投資担当者当たり5銘柄しか保有しておらず、投資担当者の多くは、1つの業種を10年、20年、あるいはさらに長い期間追い続けていることを、アインスリー氏は誇りとしている。


 トレーダー(trader)

 短期的な(1ヵ月未満、しばしば1週間未満の)株価の動きに賭けて利益を得ようとする。よくあるのは、企業に関するニュース発表や、株価のモメンタムといったテクニカルな要因に基づく短期的株価変動である。

 トレーダーは、米国の株式保有の約35%を占めるが、株価がその企業の本来価値に比べて課題か仮称家についての見解をもつ必要がない。彼らが知りたいのは、株価が極めて短期間のうちに上昇するのか下落するのか、ということだけである。


 機械的投資家(mechanical investor)

 厳格な基準や規則に基づいて意思決定を行う。指数投資家(indexers)、すなわちインデックス・ファンドのファンド・マネジャーは、機械的投資家の典型である。彼らは、S&P500の構成と合致するようにポートフォリオを構築するにすぎない。他の機械的投資家としては、クオンツ(quants)と呼ばれる人々がいる。クオンツは、ポートフォリオを構築する際にコンピュータのモデルを用い、何らの定性的な評価も行わない。


 隠れた指数投資家(closet indexer)

 アクティブ・マネージャーと謳っているが、そのポートフォリオはあたかも指数のようである点で興味深い投資家である。加えて、彼らは、幅広い株式を保有するため、それぞれの企業を深く理解することはできない。ブローゼット・インデックス。ファンド(隠れた指数投資家に分類される投資信託)の場合、1人の運用担当者は平均して100~150銘柄を担当するので、投資先の経営者と面談して得られるような深い調査を行うことは不可能である。



本来価値への投資家が企業価値評価の水準を決定する

 経営陣にとってより重要な存在なのは、本来価値への投資家である。彼らが株式を購入する際には、その取引量は他の投資家よりも大きく、最終的に株価を決定づけるからである。最も優れた本来価値への投資家の動きは、他の投資家にも模倣されるので、本来価値への投資家1ドル投資すると、他の投資家による数ドルの投資を導くことになるのである。

 本来価値への投資家は、投資ポートフォリオの企業を地道に、丹念に調査・研究する。彼らは長期的な投資採算に注目し、企業のファンダメンタルズを検討し、価値の根源の原則を用いて株価がいくらであるべきかの意思決定を行う。おそらく最も重要な点は、株式売買を通して企業、業界、競合他社について客観的思慮深い見識をもたらす彼らは、経営者にとって有益な経営資源であるということだろう。



 第8章 株式市場のバブル


  バブルは長期的な価値創造の重要性を示す



 市場の乖離があるからこそ、経営者や投資家が企業の真の本来価値を理解することはより一層重要となる。そうすることで、もし市場で何らかの価格乖離が生じている場合には、そこから利益を得ることができる。市場で株式が過大評価されているのであれば、株式を買収の対価として利用する、もしくは市場価値が低すぎるときに自社株買いを行う、といったことが可能となるのだ。

 前記の例については、2つの重要な留意事項がある。

 第1に、我々は、株式発行や自社株買い、事業の売却や買収、取引決済での現金払いや株式交換といった意思決定を、市場価格と本来価値との差異のみに基づいて行うことを推奨しているわけではない。そうではなく、こうした意思決定は、株主に対する価値創造につながる健全な戦略と事業の合理性に基づいて行われるべきである。市場での価格乖離は、戦略的決定のタイミングと実行、すなわち、いつ増資をするのか、特定の取引の支払いをどのように行うのか、といった戦術を考えるうえで重要となる。

 第2に、経営者は、自社株について 市場での価格乖離があると主張する分析に対して、厳しい目を向けるべきである。 経営者が価格乖離に基づいてアクションをとる場合、十分に説得力のある証拠が必要とされる。戦略的意思決定を実行するコストと時間に鑑みれば、価格乖離は規模および期間において重大なものでなければならない。

 自社の株価が、やがては長期的な、DCF法による本来価値への戻る限り、戦略的意思決定においてはDCFアプローチを用いるべきである。重要なのは自社の株価の長期的な動きであり、今週5~10%割安になった、というようなことではない。 』(太字は筆者)


 マッキンゼーの人たちが考える、本来価値への投資家が重要だという考えは、日本でも、例えば、「みさき投資」の投資哲学(http://www.misaki-capital.com/philosophy.html)に活かされているように思う。


 なお、市場の乖離が生じた際に、健全な戦略と事業の合理性に基づいて、(1)株式を買収の対価として利用したり、(2)自社株買いを行うことは有効な戦術であるのは間違いない。


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