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あれっ、安倍総理の外務省不信は筋金入り?


「暗闘」(山口敬之著、幻冬舎、2017/1/25第1刷発行)


 以下は掲題書からの一部抜粋。

『 2015年10月に「文化外交担当」として総理補佐官に就任した河井は、以前から様々な機会を捉えて訪米を繰り返し、議会関係やホワイトハウススタッフとの面会を重ねていた。かねて外務省を経由しないで直接アメリカ政界にアクセスするルートを開拓したいと考えていた安倍は、折りに触れて河井に親書を託すなどして、さまざまな役職・階層の議員やスタッフとの関係構築を命じていた。この「首相--補佐官──ホワイトハウス」という官邸直結ルートの開拓にこそ、安倍の外務省不信と多層的外交の狙いが垣間見える。


  日本版NSCと外交担当総理補佐官新設の背景

 日米関係に関わる重要な事項については、官邸の考え方を過不足なくタイムリーに伝える。そういう機能が必要と考えて、安倍は二つの手を打った。

 一つがアメリカのホワイトハウスに置かれた大統領諮問機関である国家安全保障会議(NSC)に相当する国家安全保障局(NSS)を官邸に新設し、局長に安倍が信頼を寄せる谷内正太郎元外務次官を据えた。外務省や防衛省の上に、外交・安全保障を統括する司令塔となる組織を置いたのである。これにより谷内は名実共にホワイトハウスのカウンターパート(オバマ政権のスーザン・ライス、トランプ政権のマイケル・フリン)とホットラインでつながった。

 NSSの新設は、日米関係に限らず、政府の外交・安全保障のあり方を抜本的に変える大きな改革である。外務・防衛を中心に各省の精鋭が70人ほど集められ谷内を支えている。以外に人数が少ないという印象を受けるが、出身省庁の利害を離れて一体感のあるチームを構成する意味でも、また情報管理という意味でも、このくらいのサイズが適当というのが現在の官邸の受け止め方だという。

 そしてもう一つの施策が、事実上の外交担当総理補佐官の新設であり、そこに河井を抜擢したのである。安倍はどうしてそこまでして、官邸とアメリカ政界をつなぐ制度と陣営の構築にこだわったのか。底流には、安倍が第一次政権で総理の座につくはるか前からの、長年の「外務省不信」があった。


  外務省不信の根源にある拉致問題

 安倍は『美しい国へ』(文春新書)の中でこう不満をぶちまけている。

「わたしを拉致問題の解決にかりたてたのは、なによりも日本の主権が侵害され、日本国民の人生が奪われたという事態の重大さであった。(中略)わが国の安全保障にかかわる重大問題だ」
「にもかかわらず、外務省の一部の人たちは、拉致問題を日朝国交正常化の障害としかとらえていなかった。相手のつくった土俵の上で、相手に気に入られる相撲をとってみせる──従来から変わらぬ外交手法、とりわけ対中、対北朝鮮外交の常道だった」

 その後、拉致問題は二度の小泉訪朝で大きな進展をみせる。しかしその過程においても、安倍と外務省主流派との間には激しい駆け引きと対立があった。


  「騙し討ち」だった平壌宣言

 当時の外務省主流派の一人、田中均元外務審議官には、安倍は何度も煮え湯を飲まされてきた。その最たるものが、第一回小泉訪朝の際の「横田めぐみさんを含む八人の拉致被害者全員死亡」と「平壌宣言」だった。当時アジア大洋州局長を務めていた田中は、福田の指示の下で北朝鮮との交渉を担当していたが、官房副長官を務め対北朝鮮強硬派とみなされていた安倍は、完全に蚊帳の外に置かれた。田中は外務省内でも北朝鮮との交渉を独占し、ごく限られた幹部以外には一切情報を出さなかった。


「もし被害者八人が全員死亡していると北朝鮮が事前に言ってきているなら、小泉総理に訪朝していただくべきではなかった。騙し討ちといってもいい」

 安倍が懸念した通り、このままいけば「拉致被害者を数人返すことと引き換えに、経済協力と日朝国交正常化を手にする」という、北朝鮮の目指すゴールに大きく近づいていく展開になりかねなかった。しかも、当時外務省の「主流派」からは、「拉致被害者一人や二人のために日朝関係を壊していいのか」というあからさまな安倍批判すら聞かれた。

 安倍にしてみれば、対北交渉を主導した田中も、チャイナスクール(外務省の中国語使いで、キャリアを通じて中国を担当する)の阿南も、交渉相手国のご機嫌を損ねないことが最優先であり、そのためには家族を奪われた拉致被害者や独裁政治から命からがら逃げ出した脱北者は二の次にしているようにしか見えなかった。 』


<感想>
 安倍総理の外務省不信の根源には拉致問題があるようだ。現在の北朝鮮の横暴への断固たる態度はその意味からも納得でき、応援して行きたい。

 河井克行 内閣総理大臣補佐官(ふるさとづくり推進及び文化外交担当)
 
http://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/meibo/hosakan/kawai_katsuyuki.html
 谷内正太郎 国家安全保障局長 兼 内閣特別顧問(国家安全保障担当)
 
http://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/kanbu/2013/yachi_shoutarou.html

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元証券マンが「あれっ」と思ったこと
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by tsuruichi1024 | 2017-07-08 08:00 | 安倍政権 | Comments(0)