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あれっ、陛下ご退位の裏に安倍政権への危機感あり?


憲法サバイバル──「憲法・戦争・天皇」をめぐる四つの対談(ちくま新書編集部編)


 以下は掲題書(第4章『本当の天皇の話をしよう』(森達達也×白井聡)からの一部抜粋。(その2)


『 国体は生き残ったのか?

白井 そもそも戦後に旧枢軸国が国際社会に復帰するにあたっては、世界に向けて「あの時のわれわれとは違った国になりました」という態度を表明しなければならなかった。たとえば、戦後のドイツが、「われわれの国家はナチス第三帝国の体制と基本的に変わらない」と表明するなんていうことはあり得なかった。もしそうであれば、戦後国際社会に復帰することはできない。

 日本も国際的にそういう約束をして復帰しているわけですから、明らかに国体は変わっているはずなんです。ところがその一方で、廃位も退位もなかったことに象徴されるように、国体の連続性というものも確かにある。続いているようで続いていない、続いていないようで続いている。

 このような国体の不明瞭性にたいして、戦後の議論はいろんなかたちで取り組んできました。基本的に、革新派は天皇制批判を行ない、保守派は天皇制擁護をやってきた。これらの議論による成果は多数あります。けれども、これらの議論のほとんどが見落としてきたきわめて重大な要素があるのではないか。それは「アメリカ」というファクターです。

 アメリカという項目があったことにより、国体はフルモデルチェンジしながら生き残ったといえます。簡潔に言えば天皇の上にワシントンが載っかっているようなかたちで、戦後の日本国の体制は形成されるに至った。これによって戦後の復興から高度経済成長を経て、経済大国化するわけですから、その体制はある面ではとてもうまくいったわけです。

 しかしながら冷戦崩壊以降、東西対立が終わってからはその体制では立ち行かなくなってきた。つまりそこかしこで、日本の国体はてっぺんにアメリカを頂いているということのリアリティーが染み出すようになってきたわけです。


  生前退位をどうみるか

白井 彼(安倍首相)は、できれば、戦後憲法を否定するのみならず、戦後民主主義体制そのものを否定するというところまで行きたい。安倍さんは第一次政権の時にすでに教育基本法の改正などをやってますから、部分的にはそれにかなり成功している。

 彼はその総仕上げとして憲法を変えたいと考えているわけですが、そうすると象徴天皇はどうなるのか。戦後民主主義と象徴天皇制がワンセットであるならば、戦後民主主義が危機に陥り破壊されるということは同時に、象徴天皇制が危機に陥り破壊されることを意味するはずです。たぶん今上天皇は、そのことを重く受け止めているのではないかと思うんです。

 
 今上天皇は「象徴天皇制はいいものだ。今後もこのシステムを滞りなく続けていくには、自分は年をとりすぎたのでやめなければならない」と言っている。ここには加齢という自然的な問題がありますが、それと同時に、戦後民主主義レジームが極めて深刻な状態にあるという危機感が見えました。おそらく天皇は退位することによって、象徴天皇制を再活性化させ、それによって間接的に戦後民主主義を救い出そうとしているのではないでしょうか。


<感想>
 冷戦終結後、アメリカ主導による国際秩序がほころびつつある中で、安倍政権の行く末(≒戦後民主主義体制の破壊)に危機感を抱いた陛下が退位をご決意されたと考えると妙にすっきりする。

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元証券マンが「あれっ」と思ったこと
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by tsuruichi1024 | 2017-07-25 08:00 | 憲法 | Comments(0)