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あれっ、拉致被害者の救出に絞った特措法?


【 危機にこそぼくらは甦る 】(その4)


 以下は、「危機にこそぼくらは甦る」(青山繁晴著、扶桑社)(七の扉 危機を笑う)からの一部抜粋。


『 3

 朝鮮半島危機を議論した、自由民主党の部会でこういうことがありました。

 党の安全保障調査会長、大ベテラン今津博代議士(元・防衛庁副長官)が部会の冒頭であいさつされました。

 通り一遍のあいさつですまされることもできましたが、しかし安保調査会長はそうされませんでした。

「たとえば法改正といった新しい取り組みをしなくていいいのか。これまで、できないと思っていたことも考えるべきではないのか」

 ぼくは、この異例のあいさつにも励まされて、こう発言しました。

「安保法制が第二次安倍政権によって成立するまで、日本国は海外の邦人を何があっても保護できない、つまり救出できない国でした。それが安保法制で自衛隊の『やってもいいよ』リストの任務として初めて追加されました。しかし、この憲法の下で国会を通すために、条件がつけられました。それが、ご承知のように相手国の承認が要る、ということです。ところが、ほんとうはそれだけではありませんね。
 実際は三つある条件が全部そろうことが必要で、相手国、今の場合は北朝鮮の同意が不可欠なだけでなく、その北朝鮮がアメリカ軍の攻撃のさなかでなぜか人民軍を中心に治安を維持していて、つまり自衛隊が行っても戦闘に巻き込まれないことも不可欠です。これが第二の条件ですね。
 
 さらには、その朝鮮人民軍あるいは北朝鮮の秘密警察などともわが自衛隊が連携できることが三つ目の条件で、これが全部、そろわないと、仮に拉致被害者がどんな目に遭われても・・・・・・拉致されてから四十年も五十年も過ぎて、その果てにどれほどまでに苦しい、むごい目に遭われていても、日本は何もできない、しない、これが現状です。
 憲法の制約はあっても、これは戦争ではなく国際法の認める自国民の救出ですから、安保法制の改正か、それとも北朝鮮の拉致被害者の救出に絞った特措法(特別措置法)の成立かを目指すべきではありませんか。ぼくはふだん、安易な特措法に批判的ですが、今回はそんなことをいっている場合ではありません」

 東京湾の「かしま」艦上で、中堅代議士の山田賢司さんが「あの件は一生懸命やっています」と仰ったのは、このことなのです。


 しかし、その山田代議士も「これまでの憲法解釈は変えられない」という官僚の壁、それは圧倒的多数のマスメディア、ジャーナリスト、学者、評論家、芸能人を使いながら既得権益、すなわち日本が「戦争に負けた国で資源もない国」のままにしておいたほうが、これまでの仕事や生活を続けられるという保身の壁、これを打ち破るのはあまりに難しいという現実を東京湾でぼくに突きつけたとも言えます。

 この場合の「憲法解釈」とは何でしょうか。

 それは実は、日本国憲法にも全く書いてはいないことです。日本国憲法は全部で百三条もある長すぎる憲法ですが、いちばん肝心な「国民をどうやって護るか」に関する項はたったの一条しかありません。

 それが第九条です。

 
 第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

二、前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

 第九条は侵略戦争を明らかに禁じています。しかしそれだけではありません。日本が主権国家なら国際法上、必ず持つべき権利、国民国家を護るために欠かすことができない権利をいくつも禁じてしまっています。

 ひとつ、戦わねばならない時には戦う権利。

 ふたつ、戦争を起こさせないための抑止力を発揮すること。すなわち日本国民に危害を加えれば、あるいは加えようとすれば痛い目に遭うと武力で威嚇する権利。

 みっつ、日本を侵害、侵略する国が武力をこうするときは反撃する権利。

 ここまでが第九条第一項にある禁止みっつです。

 よっつ、陸海空軍を持つ権利。

 いつつ、その他の戦力を持つ権利。

 むっつ、交戦規定(ROE)という国際法にとって最も大切な、ルールに基づく交戦権。

 これらが第九条第二項の禁止のみっつであり、合計で六件にわたって日本から主権の大切な、あまりに大切な主要項目を奪っています。

 その一方で、「ではどうするのか」、「国際法上の権利を全否定して、その変わりにどんな手段で日本国民を護るのか」はかけらも言及していません。だからぼくは「国民を護る手段が一字も書いてない」とずっと発信しているのです。

 前文には、どこの誰とも知れない「諸国民」に、われら日本国民の安全も命(生存)すらも委ねてしまうという、呆れた趣旨はありますが、これは本文ではなく序文にすぎません。

 しかし、「自衛隊は海外で武力行使してはならない」とは一言とも書いてありません。

 そりゃそうです。前述したように陸海空軍だけではなく、「その他の戦力」も保持できないと明記しているのですから、イージス艦に巨大なヘリ空母、潜水艦に戦車、装甲車、最先端の戦闘機まで日々、動かしている自衛隊の存在を想定しているわけがありません。

 その代わり、日本国憲法、は言わば自らの体内である第九十六条に、ちゃんと改正条項をもっています。国会の総議員の三分の二以上の賛成でやっと国民に提案(発議)できて、その国民の投票で過半数の賛成がないと改正できないという高いハードルではありますが、それでも、憲法をより良いものにしていく仕組みがビルトインされているわけです。

 ところが日本は国会議員も国民も、その改正条項を活かすことなく「解釈改憲」という奇妙な手にばかり依存してきました。これは全く同じ条文を「読み方を変えた」とこにして、実質的に憲法を改正したのに近い効果を出す、要はごまかしです。



 ありのままに申せば自衛隊など持てるはずもない憲法を、そのままにしておいて、読み方、解釈だけ変えて自衛隊を持っている代わりに「海外では戦わない」ということにしている。つまり、言い訳まで含めて憲法に書いてないことばかりをしているわけですが、そもそも「海外では戦わない」と決めてしまっていて、国民を護ることができるのでしょうか。国民は日々、仕事でも遊びでも留学でも、どんどん海外に出ているのです!」 』


<感想>
 北朝鮮情勢の緊迫が進む中、まずは、青山さんが指摘する、北朝鮮の拉致被害者の救出に絞った特措法を可及的速やかに成立させる必要がある。

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元証券マンが「あれっ」と思ったこと
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by tsuruichi1024 | 2017-09-27 08:00 | 青山繁晴 | Comments(0)