2017年 10月 16日
あれっ、東証1部の外国人の売買シェアは70%?
【 株式市場における外国人の影響 】
以下は、添付取引所の「投資部門別東証1部売買状況」の内訳。
1.投資部門別東証1部売買状況(年間)
http://www.jpx.co.jp/markets/statistics-equities/investor-type/00-02.html
(1)2016年 売買合計(シェア)/ネット
自己 201兆円(16%)/+2.5兆円
委託 1,051兆円(84%)/▲2.2兆円
(2)2007年 vs 2016年の東証1部「委託」売買合計内訳
2007年売買合計(シェア)/ネット 2016年同左
法 人 113兆円(12%)/+0.1兆円 89兆円( 9%)/+4.7兆円
個 人 223兆円(24%)/▲3.0兆円 176兆円(17%)/▲3.2兆円
海外投資家 599兆円(63%)/+4.8兆円 776兆円(74%)/▲3.6兆円
証券会社 12兆円( 1%)/+0.0兆円 10兆円( 1%)/▲0.1兆円
2.2017/9/25以降の東証1部「委託」売買合計内訳(週間)
http://www.jpx.co.jp/markets/statistics-equities/investor-type/index.html
売買合計(シェア)/ネット
9/25-9/29 10/2-10/6
法 人 2.3兆円(10%)/▲0.4兆円 2.1兆円(10%)/▲0.1兆円
個 人 4.2兆円(18%)/▲0.2兆円 4.2兆円(20%)/▲0.4兆円
海外投資家 16.7兆円(71%)/+0.2兆円 14.3兆円(69%)/+0.7兆円
証券会社 0.2兆円( 1%)/▲0.0兆円 0.2兆円( 1%)/▲0.0兆円
⇒ (委託の)海外投資家売買シェア:70%程度で株価への影響大
一方、以下は、2017/10/14の表題「平成の軌跡(下)持ち合い株解消137兆円 受け皿の外国人、持ち株比率3割に」の日経電子版記事*からの概要。
*https://www.nikkei.com/article/DGKKASGD10H0B_S7A011C1DTA000/
1.株式の持ち合い解消の受け皿:外国人
・1980年代に株高を演出した企業:取引先や金融機関との株式持ち合いを解消
⇒ 90年~2017年3月末までの売却額:137兆円
⇒ 同期間の外国人の買い増し額:150兆円強
2.持ち合い解消の背景
(1)時価会計の影響
・金融機関に続いて00年度から事業会社に導入された時価会計
⇒ 簿価のままだった株式を毎期末、時価に改める
⇒ バブル崩壊で含み益経営は行き詰まり、企業は株安局面でも株を売らざるを得なくなった
(顕著な事例)
・キリンホールディングス:過去10年で保有株を簿価ベースで4割削減
・三菱東京UFJ銀行:三菱ケミカルホールディングス株、三菱ガス化学株を減らした
(野村証券調べ)
・日本企業の持ち合い株は17年3月末時点で82兆円
⇒ 91年3月末に比べ6割、137兆円減
⇒ 東証1部の時価総額(13日時点で630兆円)の2割に相当する株式が移動(年金向けの退職給付信託に拠出したところも多い)
(2)自己資本利益率(ROE)や企業統治の重視
・取引関係の維持や買収防衛を目的にした持ち合い株の削減を促した
⇒ 業績の改善と相まって、長く5%以下だった日本企業のROEは10%近くに
3.外国人の日本株保有額
・平成に入り21兆円から174兆円に拡大
・持ち株比率は5%から30%に上昇(今や金融機関を抜き日本株最大の買い手)
参考資料 東証上場会社ベースの株式分布状況(http://www.jpx.co.jp/markets/statistics-equities/examination/01.html)
2016年度の投資部門別株式保有金額(東証1部)
外国法人等 170.5兆円(30.5%)
金融機関 162.7兆円(29.2%)
事業法人等 121.5兆円(21.8%)
個人・その他 90.2兆円(16.2%)
その他合計 558.2兆円(100%)
4.事例等
(1)英シュローダーズのアンドリュー・ローズ氏
「業績に比べ割安な銘柄が多い。海外の投資家向け広報(IR)も充実してきた」と評価する(投資対象はTDK、KDDIなど、資本効率が改善傾向にある大型株)
(2)ファンド
・米リップルウッド:98年に破綻した旧日本長期信用銀行(現新生銀行)を買収した
・米スティール・パートナーズ:物言う株主として知られる
・村上ファンド:00年、昭栄(現ヒューリック)に国内初の敵対的TOB(株式公開買い付け)を仕掛ける(結果は失敗)
(3)株価等の推移
・日経平均:2017/10/13 2万1155円、1989年末 3万8915円
・日経平均を一つの銘柄に見立て89年末から月1万円ずつ投資してきた場合:配当を含む投資リターンは1.75倍になる
⇒ 長期投資の広がりが日本企業と株式市場の活性化を促す
<感想>
グローバル市場における日本人が持つ資産の相対的シェアが低下していくことを考えると、今後も外国人の売買動向には注目して行かざるを得ないだろう。
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元証券マンが「あれっ」と思ったこと
発行者HPはこちら http://tsuru1.blog.fc2.com/
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