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あれっ、下方修正条項付CB?


【 ユーロ円CB発行事例 】



 2017/10/30、三栄建築設計(3228)がユーロ円CBを発行した。



1.2022年満期ユーロ円CB発行に関するお知らせ
 
http://san-a.com/wp/wp-content/uploads/2017/10/20171030_4.pdf


(1)発行金額:100億円
(2)期間:5年
(3)クーポン:0%
(4)主幹事:Nomura Int’l plc
(5)募集(発行)価格:102.5%(引受手数料2.5%は投資家負担)
(6)転換価格:3,000円(10/30終値2,676円。アップ率12.11%)
(7)下方修正条項:2019/1/22までの30連続取引日終値平均が転換価格を下回る場合はその価格に修正される(下限価格(フロア):80%(現状2,400円))
(8)資金使途:分譲戸建住宅に係る土地仕入資金・建築資金



2.CB発行の狙い


(1)ゼロ・クーポンで発行されるため、低コストでの資金調達が可能となる


(2)海外市場からの資金調達となるため、従来の国内市場からの調達に加え、資金調達源の多様化を図ることができる


(3)時価を上回る転換価額の設定により、発行後の一株当たり当期純利益の希薄化を抑制する効果が期待される


(4)下方修正条項を付与することにより、一定の条件下において株式への転換を促進し、自己資本増強を図ることができる



3.ローンチ後の市場価格等


(1)CBの市場価格
 ・102.95-103.95(>募集価格102.50)


(2)ローンチ翌日(10/31)の株価終値
 ・2,518円(前日比▲158円、▲5.9%)


(3)潜在株式数(CB転換に伴う)
 ・3,333千株(発行済株式21,218千株の15.7%)



4.下方修正条項に関するメリットやデメリット


(1)CB投資家のメリット
 ・株式への転換の可能性が大きくなる ⇒ オプション価値は大きくなる


(2)株主のデメリット
 ・下方修正に基づいてCBが株式に転換された場合 ⇒ 希薄化がより進む(=発行株数がより多くなる)


(3)発行会社のメリット(上記2(4))
 ・株式への転換を促進する ⇒ 自己資本増強を図ることができる



<感想>
 株価の上昇(4/14年初来安値1,462円、10/27年初来高値2,699円。約85%アップ)や投資家需要を考慮して、発行会社も納得した上で下方修正条項を付与したものと思われる。
 エクイティ・ファイナンス(含むCB)では、常に、発行会社と投資家の利益が相反する中でプライシング(条件決定)する必要がある。双方の理解を得られる落とし所を見出すことができるか、主幹事の力量が試される。


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元証券マンが「あれっ」と思ったこと
発行者HPはこちら
http://tsuru1.blog.fc2.com/
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by tsuruichi1024 | 2017-11-01 08:00 | CB | Comments(0)