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【 やってみなはれ みとくんなはれ 】



 以下は、「やってみなはれ みとくんなはれ」(山口瞳・開高健著、新潮社)(「青雲の志について──小説・鳥井信治郎──」山口瞳)からの一部抜粋。


『 赤玉ポートワインという製品がある。寿屋はこれで事業を起こした。これが当った。売れた。こういうときに、誰が、どの会社が、会社の基礎を危うくするような新事業(たとえばウイスキー)に乗りだすだろうか。食品で当れば、会社はまず安泰である。ほかの産業とはわけが違う。そいつが売れなくなってきたときに他の製品を考えるというのが普通の会社の行き方である。寿屋はそうではない。赤玉ポートワインの一番売れているときにウイスキーに乗りだすのである。ウイスキーの絶頂期にビールに突進するのである。前へ前へと進んでゆく。

 もうひとつ、例をあげよう。

 サントリーは株式を公開していない。ある人は、大阪商人の我利我利亡者と見るかもしれない。前だれの丁稚奉公を連想するかもしれない。一族で利益を独占しようとするガメツサを考えるかもしれない。

 この点に関して、佐治敬三は、つぎのように明言している。

「ビールが当ったら、株式を公開しましょう」

 不退転の決意である。鳥井信治郎の血と、寿屋の歴史が、彼にそう言わせているのである。危険は会社でひっかぶりましょう。そのかわりビールが成功したら、つまり、酒屋がインダストリーの列に加わることができたなら、みんなで喜びをわかちあいましょう。そう言っているのである。

 しかり。そのように困難な道を進んできたのだった。

 これは私の勝手な解釈である。あるいは筆がすべきすぎているかもしれない。しかし、寿屋に籍を置いたことのある人間として、いまもサントリーの宣伝にたずさわる男として、私はそう信じて疑わない。

 前へ前へ進んでいった。

 そのために社員が苦労した。』


 一方、以下は、2017/9/1~9/4付日経新聞「琥珀の夢──小説、鳥井信治郎と末裔(417~420)」(伊集院静著)からの一部抜粋。

『 同(平成十一)年十一月三日、佐治敬三は八十年の生涯を閉じた。“サントリーホール”での社葬には、父をしのぐ八千人の参列者が続いた。

 ここにあらたに“信治郎の夢”を継承する人たちがあらわれるのである。


 その年の十二月、サントリー本社、鳥井信吾副社長のデスクの電話が鳴った。

 信吾は受話器を取った。ビール事業の責任者からだった。

「副社長、先月のビール売上げの数字が出まして、十五パーセントを越えました。」


 平成十八年、“プレモル”は前年比の三倍の売上げを示した。平成二十年には“プレモル”が牽引するサントリーのビールのシェアが十パーセントを超えた。


 信忠社長の声が響いた。

「役員諸君、只今、素晴らしい報告を聞いて私も感無量です。しかし戦いはこれからです。初代信治郎社長に佐治敬三社長がビールの再挑戦の報告に行かれた折、祖父さん、いや初代社長は言われたそうだ。挑戦するからにはビール市場の三十パーセントが取れるまで石にかじりついてでもやり抜かなあかん、と。
 今日の数字は三十パーセントへのはじまりだ。何が何でもそれを達成するために全社一丸となってやり抜きましょう。“プレモル”の利益はすべて拡販のために投下する。ここで一気に攻勢をかけます。このくらいのことで喜んでいてはサントリアンの名が泣くぞ、諸君」』


<感想>
 寿屋(サントリーの前身)のPR雑誌『洋酒天国』の編集部は、在籍中に芥川賞作家・開高健(1930-1989)が芥川賞を、山口瞳(1926-1995)が直木賞を取れるような、おおらかで融通無碍であったという。
 2009(平成21)年2月に持株会社サントリーホールディングス(株)設立。2013(平成25)年7月に持株会社傘下の清涼・食品セグメントの中核企業・サントリー食品インターナショナル(株)(2587)は東証1部に上場。ビールの市場シェアが30%を超えた時に、初めて、国内酒類全体戦略の立案・実行・推進を担うサントリーBWS株式会社(英文表記Suntory Beer, Wine & Spirits Japan Ltd.)の上場が検討されることになるのかもしれない。

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by tsuruichi1024 | 2017-09-24 08:00 | アントレプレナー | Comments(0)


「琥珀の夢ー小説、鳥井信治郎と末裔」(伊集院静著、日経新聞朝刊)


 日経新聞朝刊(文化面)の掲題連載小説を毎日楽しみにしている。

 大正13年11月11日、山崎ウイスキー蒸留所が完成し、竣工式が山崎の地で催された。

 赤玉ポートワインのヒットの後、リスクが高すぎると言って誰もが反対するウイスキーへの挑戦。

 在阪の多数の名士ーーイカリソースの木村幸治郎、東洋製罐の高碕達之助、味の素の鈴木三郎助、他ーーが同席する中、アメリカで商法を学んだ達之助が三郎助に言う。

 「ニューマーケットのフロンティアですね」


<感想>
 今でこそ超巨大企業のサントリー(ホールディングス)も、偉大なアントレプレナー(鳥井信治郎)の新たなウイスキー醸造のリスクテイクから始まった。当たり前の歴史など存在しないのであろう。

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by tsuruichi1024 | 2017-06-23 08:00 | アントレプレナー | Comments(0)