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【 落としたタイヤの法的責任 】


 2017/10/18、中国自動車道路上に落ちていたタイヤに乗り上げて車が動かなくなっていたため避難していた親子2人が、同じタイヤに乗り上げて横転した大型トレーラーにはねられて亡くなった。落としたタイヤの運転手の法的責任とは?

 以下は、添付記事に基づいた関連法令概要のまとめ。


『 トレーラー横転の原因「落ちていたタイヤ」、法的責任はどうなる? <中国道死亡事故> 』
 
https://c-2.bengo4.com/n_6838/


1.道路交通法
(1)高速道路での運転者の遵守事項(第四章の二 高速自動車国道等における自動車の交通方法等の特例、第三節 運転者の義務)

(自動車の運転者の遵守事項)
第七十五条の十 自動車の運転者は、高速自動車国道等において自動車を運転しようとするときは、あらかじめ、燃料、冷却水若しくは原動機のオイルの量又は貨物の積載の状態を点検し、必要がある場合においては、高速自動車国道等において燃料、冷却水若しくは原動機のオイルの量の不足のため当該自動車を運転することができなくなること又は積載している物を転落させ、若しくは飛散させることを防止するための措置を講じなければならない。

⇒ 高速道路にスペアタイヤを落下させた場合、積載物の転落防止措置義務に違反する。

(2)罰則(免許の取消し、停止等)

第百十九条 次の各号のいずれかに該当する者は、三月以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。

十二の三 第七十五条の十(自動車の運転者の遵守事項)の規定に違反し、本線車道等において当該自動車を運転することができなくなつた者又は当該自動車に積載している物を当該高速自動車国道等に転落させ、若しくは飛散させた者

2 過失により前項第一号の二、第二号(第四十三条後段に係る部分を除く。)、第五号、第九号又は第十二号の三の罪を犯した者は、十万円以下の罰金に処する。

⇒ 刑法38条(下記2(2)参照)にある通り、基本的には故意(罪を犯す意思≒わざと)でないと罪には問えない。但し、本条のように、法律に別途特別の規定(過失(≒うっかりなど)による罰則)を設けている場合は除く。

1)故意(≒わざと)に転落防止措置義務に違反して、その結果として、積載物を転落させた場合、3か月以下の懲役または5万円以下の罰金(法119条1項12の3)

2)過失(≒うっかりなど)による場合は、10万円以下の罰金(同2項)


2.刑法
(1)過失傷害(第二十八章 過失傷害の罪)

(過失傷害)
第二百九条 過失により人を傷害した者は、三十万円以下の罰金又は科料に処する。
2 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

(過失致死)
第二百十条 過失により人を死亡させた者は、五十万円以下の罰金に処する。

(業務上過失致死傷等)
第二百十一条 業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。

⇒ 罰則:過失運転致死傷罪が成立した場合、刑事罰は5年以下の懲役・禁固または100万円以下の罰金


(2)罪を犯す意思

第七章 犯罪の不成立及び刑の減免
(故意)
第三十八条 罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。

第二十六章 殺人の罪
(殺人)
第百九十九条 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。

(傷害致死)
第二百五条 身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、三年以上の有期懲役に処する

⇒ 殺人罪や傷害致死罪:故意(罪を犯す意思)であることが大前提


3.民法
(1)不法行為(第五章)

(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

⇒ 罰則:民法上では故意・過失を問わず、高速道路を運転中、スペアタイヤを落下させることは、不法行為(民法709条)となり、それによって生じた死亡、傷害、車両損傷などの損害について、運転者には、被害者に対する損賠責任が生じる。


(2)相殺過失(第二節 債権の効力、第一款 債務不履行の責任等)

(損害賠償の方法)
第四百十七条 損害賠償は、別段の意思表示がないときは、金銭をもってその額を定める。

(過失相殺)
第四百十八条 債務の不履行に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任及びその額を定める。

(損害賠償の方法及び過失相殺)
第七百二十二条 第四百十七条の規定は、不法行為による損害賠償について準用する。
2 被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。

⇒ 後続車にも、前方を注視し、制限速度を順守しながら走行して、仮に落下物があっても衝突を避けられるように安全運転をすべき義務があると考えられ、後続車にも過失(故意ではない)があったとして、『過失相殺』で損害額の一部が自己責任となる可能性がある。


4.自動車損害賠償保障法(第二章 自動車損害賠償責任)
(自動車損害賠償責任)
第三条 自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。

⇒ 車の所有者にも、自動車損害賠償保障法3条の責任(運行供用者責任・無過失でも負う責任)が生じる(第三者に故意又は過失等があったことを証明した場合を除く)。


<感想>
 過失致死傷罪の刑事罰は5年以下の懲役・禁固または100万円以下の罰金である。親子2人が亡くなったのに対して、故意ではなく過失の場合の罰則が軽すぎるように思われる。

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元証券マンが「あれっ」と思ったこと
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by tsuruichi1024 | 2017-10-27 08:00 | 法的責任 | Comments(0)